第11話 砂は砂?
「あなた、私よりも酷いんじゃないかしら」
「そうじゃな。カネの亡者じゃな。」
「なんでですか!」
・・・
そっか、本部テントの割り当てられたスペースに着くなり寝てしまったのか。
如何に一攫千金ブーストが掛かっていても、35歳のおっさんの精神力的には、2日が限界だったのだろう。
2人に会うのは数日振りだというのに、のっけから手厳しいなぁ。
「カネの亡者ってか、稼げるときに稼ぐのは普通じゃないですか?」
この世界で今の俺は安定収入が確立できてない訳だし。
それに、相手方が提案した来た明らかに不当なレートでやってるんだから、ある意味ブラック・・・。
たまたま、先生の教えてくれた【黒き理】があるから助かっているってだけじゃん。
「言われてみればそうかもしれんのう。」
「それにしても、集め過ぎよ。ちょっとアレ見なさいよ!」
先生の示した先には物凄い量の砂でちょっとした丘が出来ていた。
「ははは、すいません。すぐに納品しますから。」
「別にいいわよ。」
「え?」
「だって、いざとなれば・・・」
先生が砂を手に取って両手で揉んだ。
開いた手に乗っていたのは、真っ黒の丸い石だ。
砂をまとめただけの石・・・ではない。
光が当たると、虹のような多色の色彩を放っている・・・。
しかも、色彩がはっきりしていて・・・。
「これ・・・見た事あるなぁ、何だっけ。名前が出てこない。」
「オパールよ。しかもブラックオパール。」
「そうだ、オパール!・・・あれ?ダイヤを作った時と違って、砂の量はあんまり減らないですね・・・。」
「そうね。むしろ軽くなったわ。」
「マジっすか?」
「そうよ。マジよ。ただ構造をちょっと変えただけだから。」
「もしかして砂で納品しないで、オパールで別の宝飾関係の店に降ろした方が、高く売れる?」
「そうね。ただ・・・」
「なんですか?」
「ブラックオパールが高く売れるとしても、そんなに需要があるかしら。」
「そうですね。大量に売り出したら、値崩れしてしまうかもしれませんね。」
「まぁ、ブラックオパールにして売るなら、一粒の大きさが勝負だから、砂粒の量での取引とは分けて考えた方がいいわね。」
「確かに・・・。」
「そもそも、オパールなんて、単位が“カラット”でしょ?10カラット、つまり、2gのブラックオパールなんて1,000,000Yくらいじゃないかしら。」
「はいーっ!?・・・2gで1,000,000Y・・・ちょっと待ってください。ここに砂20ktあるんですよ。」
「だからぁ!・・・同じようには考えられないでしょ?」
「あ・・・」
「それに、オパールにはほんの僅か水が必要よ。ここには20ktのオパールを作る水のストックは無いわ。」
「水なら今度グラーシュに作ってもらいます。」
「それが良いわね。あの子の水は、マナじゃなくて本物の水だから。」
「ちょっと、お前さんたち、その辺にしないと、人相が変わるぞ。」
「クソジジイは黙ってなさい!」
いや・・・
おじいさんの忠告、一理あるかもしれない。
冷静になろう。
アプローチを変えよう。
困った時には、世にも珍しいブラックオパールでおカネを工面するとして、砂は砂で納品した方が良さそうだ。
調子乗ってブラックオパールを売り倒して相場が崩れたら、緊急の近作が出来なくなってしまうからな。
今は砂のままでも大量納品を受け付けてくれるって状況な訳だし。
「おじいさん、有難うございます。」
「ちょっと、あなた何言ってるの!」
「大丈夫ですよ。悪いようにはしませんから。」




