第10話 気合を入れ直して再開
採石したらしただけ納品OKと聞いて、気が緩んだのか、一息入れたら、どっと疲れが出て来てしまった。
それに、俺の採石方法は、人目に触れない方がいいってのもあるから、日中は、ゴロゴロ過ごした。
日の上っている最中、ずーーーーーっとゴロゴロ過ごすなんて、いつ振りだろう。
前世を振り返っても、思い当たる節が無い。
善意で対応してくれる職員さんに囲まれて、ほぼ接待の様な待遇で・・・。
いや~、なんだかすいません。
日が落ちたら死ぬほど働きますんで。
・・・
寝れん!
本当は、寝たいのよ。
接待されて寛げる空間にいるのだから、大の字になって寝たい。
でも、ぜんっぜん、寝れん!!
だって、俺みたいな年収300万のサラリーマンが、働きさえすれば、億金を手に入れることができる場所に居るんだもん。
それも、真っ当な報酬として、一晩で億金が見込めるんだから、コーフンが抑えられない。
今から夜が待ち遠しい。
・・・
・・・・・
日が落ち、各“工”テントからの報告が本部テントに届き、一時的な賑わいを見せた後、採石場が静かになった。
灯りをともして夜作業を行っている場所から、小さな採石作業の音が聞こえるが、おおむね静かだ。
「さてと・・・」
興奮する自分を無理やり押さえつけるのにも限界が来ていた。
「今夜もやるんですか?もう十分な気もしますけど。」
グラーシュが声をかけてきた。
「今夜が本当の稼ぎ時だよ。」
「そうなんですか」
「だって、採石したらしただけ納品を受けますって言って貰えたんだよ。マジで遊んで暮らせるだけの金稼いでくるわ。」
「遊んで暮らすって・・・。」
「冗談だよ、冗談。アルディ!行くよ。」
「御意」
周囲に警戒しながら、静かに作業員の少ない採石ポイントに移動した。
・・・
良し。
サイコーのポイントだ。
周囲には誰も居ない。
これならアルディに音を出して貰う必要もなさそうだけど、仕事で一番大切なのは“念のため”だ。
アルディに、一晩中、つるはしを振り続けてもらう。
これが出来るアルディは、人外だよな~って改めて思う。
さて、俺は今夜本気だ。
まずは、昨日収穫した砂の一部から闇の粒子を抽出した。
闇の分身を9体出すには、手持ちの闇の粒子が不足していたからだ。
要は、減った分以上に採石すればいいだけの事だ。
次は、9体の分身を闇の粒子で組成して・・・。
“採石開始!”
目指せ億万長者!
打倒、侯爵家!・・・なんてね。
・・・
・・・・・
チュン、チュン・・・
日が昇り始めた頃、小鳥の鳴き声で我に返った。
やばい。
見上げるほどの花崗岩の岩がいくつか無くなって、景色が変わってる。
昨日は一応、薄く広くを意識していたけど。
ついつい“目指せ億万長者!”で気合が入り過ぎた。
ストックの総量は・・・。
――!?
20kt!
やっちまったな。
流石にこれは取り過ぎたか?
いや、こういうところで躊躇するから、金持ちになれないんだ!・・・多分。
絶対に手加減なんかしないぞ!
一攫千金のチャンスなんだ。
許されるなら、本部テントで休んで、今夜も砂集めだ!




