第9話 大量納品で変わる待遇
「あの、グラーシュさん、全部でどのくらいの量の納品でしょうか。」
5回ほど容器を交換したくらいで、職員の1人がグラーシュに話しかけた。
グラーシュは重さが分からないから、俺の方を見てきた。
「すいません、私が変わってお答えいたします。よろしいですか?」
「はい、どうぞ。」
「合計で4,000tです。」
・・・
「えーっと・・・4,000kgですかね?」
「いえ、4,000tです。」
「はいーー!?」
突然の膨大な量の納品予定に、テント内が騒然とし始めた。
まぁ、そうなるわな。
職員が集まって打合せを始めた。
すると一人が、テントを飛び出していった。
責任者のところに走ったな。
「グラーシュ様、4,000tの納品はちょっと予想外でした。責任者と打ち合わせしますので、少々お時間をください。」
「はい。」
・・・
・・・・・
テントの奥から責任者が出てきた。
「お待たせしました。大量納品と聞いて、お礼を申し上げに参りました。」
言っている事は冷静だが、息が上がってる様子から、取り乱していることが伺えた。
「4,000t全ての納品に対応して頂けるという事ですか?」
「有難くお受け取りしたいのですが、報告では、転移魔法で他の空間で保管して下さっているようですが・・・」
「はい。」
「それでしたら、別の場所にて受け取りをしたいのですが、宜しいでしょうか。」
「大丈夫ですよ。量が量なので、私もその方が良いかと思っていました。」
「申し訳ないのですが、その手配にお時間を頂きたいので、本部テントでおくつろぎいただけますか?」
「はい!」
グラーシュが喜んで返事してしまった。
ちょっと・・・グラーシュは採石作業してないでしょ?
まぁ、こんな採石場で申し訳ないけど、オフをのんびり過ごして貰うか。
「すいません。」
「どうされました?」
「4,000tの納品で、工業ギルドの必要としている量は達成するんですか?」
「正直に申しますと、十分です。ただ・・・」
「ただ?」
「ここの採石場に現場事務所やテントを張って大勢の人も集めてしまったので、当初予定していた期限までは、続けようと思います。」
「なるほど、それもそうですね。」
「それに、砂は腐るものでもありませんし、利用用途は、ガラス、鋳物用、研磨用と多岐に及びますから。」
チラチラとこちらの顔色を窺って説明している様子からすると、それだけじゃないだろ?
むしろ、俺からの納品は1kg5Yという破格だからだろ?
「それならば、私も一休みしたら、もう一度採石作業してもよろしいでしょうか?」
「はいっ!ぜひお願いします。」
多分、ビンゴだな。
責任者に導かれるまま本部テントに移動した。
アルディとエレナにも馬を連れて来てもらった。
大きさはあるが、所詮は現場に設営したテントだから、作業の騒音はあるし、メチャクチャ快適って訳ではない。
ただ、大量納品で気を良くしてくれたせいか、職員さんがお茶やら食事やら手配してくれるから全く不自由はしなかった。
1kg5Yという破格で、4,000tも仕入れることが出来て、しかも追加もありうると来れば、態度も変わるわな。
しっかし、4,000tって、1kg5Yだから、20,000,000Y!
2千万Yだぞ。
そんなカネ、あるんか?
昨日訪問した工業ギルドの佇まいからして、そんな金が常にストックされているように見えなかった。
こりゃあ、また引換券かな。
頼むから、シーデリア銀行まで受取に行くのは勘弁してくれよ。




