第8話 気合が入りすぎ
エレナが作業に加わってくれないから、仕方ない。
俺は2体の分身体を闇の粒子で作った。
先生の話では闇の粒子で作った分身体は吸収が出来るみたいだから、ひたすら花崗岩を吸収するように指示を出した。
回収したら、“完全乾燥させて直径1.5mm以下に粉砕“をイメージして、どんどん砂を集める。
ただひたすら、集める。
・・・
・・・・・
採石場の灯りが1つ、また1つと消えていった。
俺らだけが明かりをつけて作業していると偵察に来る奴らもいるだろうから、俺らも少し早く作業を終わりにした。
さっさと仮眠をとって、皆が寝静まってから再開することにした。
しかし、悔しさのあまり、興奮して、寝付けなかった。
初めて訪問した工業ギルドで、いいように扱われて契約を結んでしまった自分が悪いんだけどさ。
初対面で、腰の曲がったお爺さんに、あそこまで上手いことやれて・・・アドレナリンMAXなんだわ。
絶対に、ぎゃふんと言わせてやる!
夜間作業者も寝静まって、採石場が静まりかえったころ、俺は独りで作業を再開した。
明るくなってからはこんな採石方法は採用できないから、日が昇るまでが勝負だ。
夢中になって、アドレナリンに物を言わせて・・・
・・・
・・・・・
―――!?
日が当たり、自分が採石した場所が明らかになって、はっと気が付いた。
ヤバい・・・。
やり過ぎた・・・。
集めたストックを確認した。
25mプール3杯分ぐらいの花崗岩がある・・・。
どう考えてもやりすぎだ。
吸収の際に手ごたえが無いのと、アドレナリンのせいで、やけになっていてストック量を全然考えてもいなかった。
これ・・・重さどんくらいあるんだ・・・。
!?
4,000・・・トン?
4kt超あるやん!!
流石に・・・こんなに買い取ってくれるわけないよな。
かといって元に戻すのは、めんどくさいし・・・。
仕方ない、買い取ってもらえなかった残りは、個人的に有効活用するとしよう。
使い道が全然思いつかないけど・・・。
ただ、このまま、作業を続けるわけにもいかない。
「こんなに要らない!」って、受け取り拒否されるなら採石作業が無駄だし。
ひとまず、アルディとエレナをテントに残し、馬の世話を指示だけして、俺とグラーシュは最寄りの“工”テントに向かった。
作業者が報告の為にテントに集まっていないタイミングを見計らって、いざ突撃!
「すいませーん、集めた砂の納品に来ました。」
「はーい。こちらへどうぞ~。」
案内された先には、数名の職員と“台はかり”があった。
「これ。最大いくつまで図れますか?」
「台はかりの測定限界は250kgまでです。納品は砂でよろしいでしょうか?」
「はい。」
「それでしたら、容器をここに置きますので、中に注いでください。100kgまでを一区切りとして、測定致します。」
「分かりました。」
「納品する砂が見当たりませんが・・・この後リアカーか何かで持ち込まれますか?」
「いえ。この袋から出します。」
そう言って、適当な革袋を胸ポケット内側のゲートから取り出して見せた。
「魔法で採集されたという事ですか?」
魔法じゃないんだけど、説明すると長くなりそうだから、魔法って事にするか・・・。
「そんなカンジです。」
「そんなカンジ?・・・分かりました。それでは容器に注いでください。ランダムで品質検査のために砂を抽出させていただきますので、ご了承ください。」
「はい。了解です。」
俺は器の上で、革袋の口を下に向けて、革袋の中でゲートを開けて砂を流出させた。
予めアナウンスされたとおり、ランダムで職員が砂を採取して検査していた。
程無く、容器がいっぱいになった。
「品質は良好ですね。粒もほとんど揃ってますし、マナの影響も残っていません。非常にありがたいです。」
そう言いながら、手際よく職員が容器を交換してくれた。
「次、どうぞ。」
「はい。」
促されるままに、また容器に砂を注いだ。




