第7話 上手いことやられた・・・
「ここで報酬を受け取る人、それぞれ相場がバラバラでさ・・・。それだけならまだしも、俺らの1kg5Yはどう見ても安過ぎる!」
「え?」
「もしかすると、砂不足の緊急事態で、始めは高い報酬で人を集めておいて、すこーしずつ契約金を下げて、費用を抑えているんだと思う。」
「えーっ!」
「契約したらすぐ現場に出てしまうからね。契約した人が未契約の人にリークってことはあまり無いんじゃないかな。」
「他の人のレートってどのくらいなんですか!?」
「ヒアリングして回っている訳じゃないから分からないけど、ここで見ている限り、高い人では1kg50Y貰っている人もいる。」
「1kg50Y!?」
1日1,000kg集めれば、50,000Y・・・、そのくらい貰えればいいかもしれない。
もしかすると、火を灯してやっている連中は、もっとレートが高いかもしれない。
レートが高ければ、下請け人を引き連れて夜通し掘ってもいいもんな。
「そんなに違うなんて・・・。辞めます?」
「うーん、その辺は責任者とどういう話になっているの?」
「納品に対して報酬を払うから、辞めるか続けるかの選択は、自由と説明されました。」
なるほど・・・。
「注意事項とかは?」
「砂の品質に影響するから、基本的に魔法や火薬などの使用は禁止だそうです。」
「基本的に?」
「はい、結局のところ、納品に対しての報酬なので、納品時に品質をチェックし、一定レベルの品質の砂しか受け取らないみたいで。」
「そうか・・・ん?砂の納品?さっき、小石や小さな岩のまま納品していた人もいたよ。」
「はい。砕いて砂にできるサイズなら納品できるようです。」
「ふんふん。」
「その代わり、報酬は半額です。あくまで砂の納品ですので、直径が2mm以下になっていることが必要のようです。」
「マジかよ。そしたら、さっきの高額報酬の連中は、砂で納品していたら、1kg100Yだったってことか。」
俺たちの20倍のレート・・・。
「そうなりますね・・・どうしますか?」
「なんか・・・」
「なんか?」
「逆にテンション上がってきたっ!泡吹かせてやるっ!!」
「はいっ!」
「1日の納品上限とか言われた?」
「その点については何もありません。よっぽど砂が足りないんだと思います。」
よし!
「夜通しやるか。」
「え?今からですか?」
「そう。グラーシュとアルディは火の番していればいいよ。俺とエレナでやるから。」
「はい?」
「大丈夫。安心して!」
・・・
出来るだけ他の作業者から離れた採石ポイントに移動した。
俺の採石作業は至極簡単だ。
俺の前にゲートを展開させて花崗岩に突っ込むだけ。
夜の作業が許されていることが功を奏したわ。
らくちん、らくちん。
お願いしたとおり、グラーシュはアルディと一緒に野営地を設営している。
ただ、エレナがいう事を聞いてくれない。
「頼むよ。あのスキル使って、花崗岩に突っ込んでどんどん吸収してよ~。」
「嫌です。そんなことをするための力ではありません。」
くーっ。
何を言っても、この“そんなことをするための力ではない”の一点張りなんだよな~。
無理にさせるのも、俺が気分悪いし・・・。
「分かった。エレナはアルディと交代してもらっていいかな?」
「分かりました。」
・・・
少し経つと、借りたつるはしを肩に掛けたアルディが到着した。
“俺の作業が終わるまで、ひたすらつるはしで花崗岩を叩いて”
“御意”
これはあくまでカムフラージュ。
俺の作業が他の作業員に邪魔されないように、作業音を創り出すための“音出し”だ。
アルディはこんな仕事も受けてくれるのに・・・。
まぁ、いっか。




