第5話 人探しの代償?
言われた通り、西に向かって馬を走らせた。
海が見えてきたところで、工業ギルドが見えてきた。
私立ギルドで、さほど大きくなさそうだ。
しかし、建屋の大きさで仕事をする訳じゃない!
きっといい情報が手に入る!
そう信じて、グラーシュと建物に入ってみた。
おかしいな・・・
誰も居ない。
「職員さん達・・・何処に行っちゃったんでしょうか。」
グラーシュが見渡しながら心配そうに呟いた。
「ちょっと、待っててみようか。」
・・・
少し待つと、腰の曲がったお爺さんがカウンターに出てきた。
おいおい、あんな爺さんも働いてるんか・・・。
この世の中は、悠々自適に年金暮らしって訳には行かないんだな。
「いらっしゃい。」
「すいません、初めての訪問なので勝手がわからないんですけど・・・。」
「まずは、ギルドカードを拝見しようかね。」
「あ、すいません。」
グラーシュが慌てて前に出てギルドカードを渡した。
「ご丁寧に渡してくださってぇ。ギルドカードは見せるだけでもいいんですよ。新米さんかな?」
「あっ、はい。」
「えぇっとぉ、グラーシュ・カラーさんだね。ランクは・・・」
そこまで言うと、おじいさんの声が途切れてしまった。
○んだ?
グラーシュの後ろからおじいさんを見ると、目を細めて、ギルドカードを見ている。
「新米さんが、南の英傑でランク103・・・・こりゃ凄いな。長生きってのは、するもんだな~。後ろにいる3人は?」
「私の従者です。」
「ほぇ~、流石ランク103は違うな。ギルドメンバーでチーム組んでるんじゃなくて従者か・・・。で、仕事を探しに?」
「いえ、人探しに来ました。」
「人?誰かね?」
「鍛冶屋のボルカールさんです。」
「おぉ、ボルカールを探してたんかね。」
「はい、お店分かりますか?」
「多分、分かると思う。」
「多分?」
つい後ろから口を挟んでしまった。
「うむ、このギルドにボルカールは登録してないんじゃが、ミーヴ内のどこかの工業ギルドに登録してるはずじゃ。」
「そういうもんなんですね。」
「いかに名匠と言えど、ギルドに登録していた方が、仕事しやすいからな・・・。ん-、ちょっと時間をくれれば、そのうちに調べるが、どうじゃ?」
グラーシュが、俺の顔を見てきた。
俺が頷いたのを見て、おじいさんの方に向き直った。
「分かりました。」
「ついでと言っちゃあなんだが・・・」
「ついで?」
「今、ガラスの材料と鋳型と研磨用の“珪砂”を集めとってな。人手が不足してて、職員も総出で砂集め中なんじゃ。」
「はい・・・。」
「仕事じゃ、仕事!」
「そういう事ですか。報酬はお幾らでしょうか?」
「1kg5Yじゃ。どうじゃ?」
グラーシュが困ったような顔をしてこちらを見てきた。
いや、俺だって・・・。
そもそも砂の相場なんて、全然わからないぞ。
ただ、おじいさんが意地悪しているようにも見えないし・・・ええぃ、ままよ!
グラーシュに向かって俺が頷いた。
「分かりました。やります。」
「商談成立じゃな。そうしたら、採集場所はこの紙に書いてあるから、向かってくれ。」
手渡された紙には、地図とグラーシュ・カラーが1kg5Yで仕事を受けた旨の契約内容の記載とギルド印鑑が押されていた。




