第4話 犬も歩けば棒に当たる
次は、道具屋に入った。
何がきっかけでボルカールの店に行きつけるか分からないし・・・。
“下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる”だ。
「いらっしゃーい!」
元気なおばちゃんが店の奥から出てきてくれた。
店内は・・・ポーションや毒消しといった一般的な商品だけではなく、見た事も聞いたことも無いような薬や、生薬が並んでいる。
グラーシュは好奇心を刺激されたのか、一人で店内を見て回り始めた。
「お兄さん」
「はい?」
「キレイな彼女だね~。」
おばちゃんが俺の方に寄ってきた。
手には、怪しい薬を持っている。
なんだよその、ピンク色のラベル張られた紫色の液体は・・・。
「なんですか?」
「この薬、すんごいから、買ってみない?」
「はぁ?」
「キレイな彼女の新しい一面が見れるかもよ~。」
「・・・」
「最近手に入ったんだけどね、海の向こうでは大流行の薬みたいよ~。」
「・・・」
「リピーターも多くて、残りが少ないんだけどね・・・お兄さん、どう?」
「値段は?」
「そう来なくっちゃ!今なら特別に500Yよ。」
「分かりました。1つ下さい。」
「わかってるね~、お兄さん!」
いや、多分、俺はおばさんの思っている事が何一つわかっていないと思うぞ。
そんなことを言ってもこの手のおばちゃんには聞いてもらえないから、わざわざ言い返しはしないけど。
グラーシュが店内を見て回っているうちに会計を済ませた。
「毎度あり!今夜は楽しみだね~。」
「ははは、そうですね。ところで、ちょっとお聞きしたいことが在るのですが・・・。」
「はいはい、何でもどうぞ~」
おい、不気味なほど機嫌がいいな・・・。
500Yの商品が1つ売れただけなのに・・・なんだ?
・・・
それは後から考えるとして・・・
「ボルカールって言う鍛冶屋の店を探しているんですけど、ご存じですか?」
「そんな人、知らないねぇ。」
「有名な鍛冶屋で、ミーヴに店があると聞いたんですけど・・・」
「知らないよ。そんなに知りたきゃ、工業ギルドにでも行って聞いてみればいいじゃないか!」
あ!
その手があったじゃん。
自分がギルドメンバーじゃないと、そういう事って全然思いつかないよな。
「ありがとうございます。そうしてみますね。ちなみに、ここから一番近い工業ギルドってどこにありますか?」
「うち店の前の通りを西へ行ってごらん、通りの右手にあるから。」
「ありがとうございます。助かりました。」
「いいのいいの、そんなことよりさ。その薬使って、また欲しくなったら是非また来ておくれ。入荷の手配は済んでいるからさ。」
「ははは、分かりました。」
熱心に商品を1つずつ見て回っているグラーシュの近くに駆け寄り、店を後にした。
「ルラン様、何か買われていましたよね?」
「うん、何も買わずにボルカールの店の在り処を聞くのは失礼かと思ってね。」
「なるほど~。」
「おばさんが熱心に勧めてきたし、かなり安かったから別にいいかなって。」
「何、買われたんですか?」
「良くわからない薬。なにやら大人が夜元気になれる薬らしいよ。」
・・・
ちょ、沈黙しないで、グラーシュ・・・。
「それ・・・」
「はい。」
ドキドキしながら返事をした。
「魔法やスキルの修得の前に使ったら、倒れずに修得できますかね?」
は?
そう来たか・・・。
「ははは。そうじゃないと思うよ」
「え?」
グラーシュ、サイコーだわ。
てのと、こっちが恥ずかしくなるわ。




