第21話 ミーヴ入り前夜
ミーヴが見えてきたのは、王都中心市街地を出て、4日目の昼過ぎだった。
初日の夜はおじいさんと先生に会えたが、その後の二晩は会えなかった。
多分、俺が“フォグパレス中のグラーシュの様子が変”っていうのを、理解どころか、把握もできていないことで、放置されているんだろう。
相変わらず、俺にはフォグパレスに集中しているようにしか見えないんだけど・・・。
分からんことは置いといて、分かっていることに着目すると、グラーシュの熟練度がかなり進んでいる。
まずは、ウォーターニードルだ。
「グラーシュ、ウォーターニードルはほとんどマナを消費することなく使用できてるでしょ?」
「はい。」
「もともとがコモン魔法で、消費マナは少ない物だったからね。」
グラーシュの努力による熟練度上昇に伴う魔法効率の向上と、水属性の加護によるウンディーネの補助の賜物だ。
「無詠唱で、好きなタイミングで好きなように作れるようにして、発射までできるようにすれば、グラーシュの格闘術の幅も広がるね。」
「!?」
「ね!もう少し頑張って。」
「はい!」
次に、ガストジャベリン。
ガストジャベリンも、効率が上昇してきたようだ。
始めは数発しか放てなかったのが、今や10発くらいは放てるようだ。
「ガストジャベリンは、レア魔法だし、ケイコも詠唱していたことを考えると、熟練度が上がっても無詠唱は難しいだろうね。」
「いえ、いずれは、無詠唱でゴブリンやオーガを、1発で仕留めれるようにします!」
おぉぉ、この積極性は、マジで好意に値する。
風属性を何としてもゲットさせたいものだ。
そして、何より、フォグパレスだ。
3日目には、グラーシュとアルディとエレナを対象に20m四方のサイズを維持しながら、12時間、建立状態を維持していた。
しかも、その中で、ウォーターニードルやガストジャベリンの練習をし続けていた。
もしかすると、グラーシュは魔法の才能が凄いあるのかもしれない。
それに加えて、水属性の加護がフォグパレスの魔法効率を上げている。
でも、ここまで作り上げれた最大の要因は、才能ではなく、グラーシュがひたむきに努力したからだと思う。
結局本人がやらなきゃ始まらない。
才能が有っても、加護があっても、上手くいかないことはある。
事実、最初のフォグパレスはウンディーネの暴走があった訳だし。
でも、そんなときに打開するのは、努力だ。
何でもかんでも力いっぱい、スタミナの続く限り、努力すればいいという訳じゃない。
投げ出さずに、程よく距離を取りつつ、頭の片隅においておけば、全く関係の無い事に取り組んでもヒントを掴むことはある。
それも、糸口を探す努力の1つだと思う。
グラーシュは幸いそこまでしなくても、マナの続く限り反復演習で熟練度を上げれたみたいだけど・・・。
こちらの世界も、ってか、どこの世界も、その点は同じなんだろうな~。
明日は、ミーブ入りだ!
俺も属性の取得に関する糸口を諦めずに探すぞー!




