第19話 マヌケと向き合う
分かってるんだ、怒られるのは、おじいさんと先生に・・・。
マヌケって・・・。
でも、これも、一通り怒られるしかない。
自分のせいで他人に溜まった鬱憤は、1人ずつ怒られてガス抜きせねばならんのだ。
怒られるくらいで済むなら、怒られておこう。
怒られて謝っても気が済まないって言う人は、今後の人間関係を見直すとして・・・。
おじいさんと先生はそんな人じゃないから。
このマヌケ!って怒られたら、ちゃんと向き合って、謝って、済ませよう。
「お疲れ様でーす・・・。」
「おぉ、お疲れ様、お疲れ様。」
「大変だったわね。」
「え?あれ?怒ってない?」
「なんで儂等が怒らなきゃならんのじゃ?」
「そうよ。別にスキルの取り扱いを間違えた訳じゃないし。」
「単にお前さんが、マヌケで、旅にスパイスが効いたってだけじゃろ?」
言われてみれば・・・その通りか。
「それに、おまえさんのマヌケっぷりを、いちいち指摘してると、こっちが持たん。」
「そうね、日が昇る度に怒るようなものだわ。もう、自然現象の1つみたいなものなのよ。そんなものにその都度真面目にリアクションしていたら、どうかなっちゃうわ。」
なんだろう。
怒られなかったのは良かったけど・・・その理由は嬉しくないなぁ。
とっても複雑だ。
“怒られ無くなったら終わり”って言葉があるけど、それは周りが俺の成長を諦めたという一面を表すんだと思ってる。
俺のマヌケはもう直らないって、おじいさんと先生は悟っちゃったんだ・・・。
俺のマヌケが手放しで許容されたって事じゃない、呆れられたってだけだから。
後は、俺自身がマヌケを直していくしかない。
だって、マヌケのせいで旅がつまらなくなったら、俺が損するし、仲間に迷惑をかけてしまうから。
「自主反省は済んだ?」
「はい。」
「がはは、自覚して、自分の特徴と向き合って、精進せい。それもまた自分の人生を楽しむコツじゃ。」
「はい。」
俺の人生には、他の人の人生と違う俺の人生特有の妙味があって、俺の人生を愉しむ特権は俺にしかないってか。
その“俺の人生の妙味”を味わって楽しむには、俺の人生の特徴ときちんと向き合わないと・・・だな。
スタートが“死に損ない”で、“嫌われ者”だったから、分かりやすくて良かった。
“マヌケ”はどんな味わいになるか分からんから、分からんなりに歯ごたえや味の変化があって、愉しめそうだ。
「ところでじゃ、なんかグラーシュの様子変じゃなかったか?」
「え?・・・いつですか?」
「いつって、さっきじゃよ、フォグパレスを愉しんでいる間と言ったらいいのかな・・・。」
「そうね。なんか・・・ね。」
「ん?フォグパレスをちゃんとコントロールするために必死だったからじゃなくて?」
・・・
「本物か・・・。」
「本物ね・・・。」
「え?」




