第17話 人生万事塞翁がウマ
西の市街地の郊外まで来た。
このまま市街地入りもできるけど・・・。
なんか、中央市街地であんな光景を貴族たちに思いっきりデモンストレーションしてしまったから、西の市街地に入るのが怖い。
だから、今夜はここで久しぶりの野営だ。
で、そのまま西の市街地を迂回して、ミーヴ侯爵領は南端から入りたい。
はぁ。
今夜までは、リーチ伯爵の豪邸で、大浴場という名の温泉施設でまったりできると思ってたんだけどな~。
俺のマヌケで、泊まり損ねてしまった・・・。
マヌケ、ダメ、絶対。
くよくよしてても仕方ない。
この自分のマヌケっぷりが招いた事態は、受け止めて、気持ちを切り替えて、今を大切にしないと。
「今夜はこの辺で野営!総員準備開始!」・・・なんてね。
上司が大げさに檄を入れるのは、自身の無い自分への喝を入れるためにってこともあるだろうなって思っていた・・・。
自分がこうして、ついつい口走ったことで、確信に至った。
・・・
でも、“人生万事塞翁が馬”とは、よく言ったもので、こうして4人で、協力しながら野営も楽しくて、イイ!
もちろん、執事さんやメイドさんにいろいろやってもらって、自分のやるべきことに集中するってのも良いけどね。
無事に焚火を囲んで、美味しい夕飯にありつけた。
「グラーシュ、ごめんね。アホなことを指示してしまって。」
「いえいえ。制御できなかった私が未熟なので・・・。」
「覚えたての魔法の使用初日なんだから、それは仕方ないよ。でね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、イイ?」
「はい。」
「フォグパレスを展開中に、グラーシュ自身は動けるの?」
「動けますよ。」
「格闘もできるし、他の魔法も使えそう?」
「はい。ウンディーネの補助がかなり大きいです。」
「だから、そのウンディーネが暴走しちゃうと・・・って事か。」
「はい。」
水属性の加護の無い人は、フォグパレスを展開すると、フォグパレスに集中していて他は何もできなくなるかもしれないのか・・・。
これは・・・
グラーシュの伸びしろ、ヤバいな。
「ウンディーネの暴走は抑えれそう?」
「抑えます!ウンディーネも反省してたようですし。」
ははは、コミュニケーション取れているなら大丈夫かな。
「早速だけど、そのウンディーネに名誉挽回のチャンスをプレゼントしたいんだけど、どうかな?」
「はい!是非!」
「そしたら、今夜の野営地を包むサイズで作ってもらえるかな。」
「はい!」
グラーシュは返事をするなり、スクっと立ち上がった。
え・・・、ちょ、まだ、食事終ってな・・・
「フォグパレス!」
ブワッ!
グラーシュを中心に衝撃が展開した。
視界が青みがかっている。
既に、フォグパレスの中だ。
凄い、こんなに簡単に?
「グラーシュ、ちょっとそこで待機ね」
「はい・・・。」
野営地から離れて、フォグパレスの域外に出てみた。
20m四方、高さも20mくらいの青く綺麗な宮殿が建立している。
中心はグラーシュのようだ。
サイズ感とか、完璧やん。
域内に戻ってみた。
「グラーシュ、完璧!」
「ありがとうございます。」
「このまま色々試していい?」
「はい・・・。」




