第16話 マヌケ発動
視線の先にあるはずのリーチ伯爵邸は、青色の大きな建物に覆われていた。
「まさか・・・」
グラーシュのフォグパレスか!
あんなに大きなのが出来るの!?
信じられない。
でも【軍】魔法で、1000人位は守れるって話だから、当然か。
鑑定眼【軍】は、いくら試しても、外からは何の変化も無く、目立つ事が無い。
その先入観があって、安易にフォグパレスの訓練を提案してしまっていた。
俺は何処までマヌケなんだ。
馬車を走らせて近づいていくに連れて、人だかりができている事に気が付いた。
王都中心市街地で、あんなバカでかい魔法を発動すれば、野次馬も集まるわな。
よく見ると、野次馬の身なりが良い。
貴族ばかりか・・・。
やらかした・・・。
マジで転生して最大の“やらかし”だ。
目立ち過ぎだ。
人だかりが凄すぎて馬車で近づけない!
飛び降りて、フォグパレスを目指して走った。
・・・
・・・・・
グラーシュは本館の裏に広がる演習場に居た。
その真ん中で、座り込んでいる。
「グラーシュ!」
「ルラン様、ご・・・ごめんなさい。」
駆け寄って声を掛けたら、返事があった。
魔法の事がよく分からない俺は、意識を失っているとかのアクシデントを気にしていたが、ひとまず安心だ。
「いや、いいんだよ。気にしないで。フォグパレス、成功したんだね。おめでとう。」
「は、はい。」
「で、そろそろ終えれそう?」
「それが・・・」
「どうしたの?」
「注目されて興奮しているウンディーネが暴走しちゃって・・・さっきからお願いしてるのに、終わらせてくれないんです。」
ウンディーネは精霊だから、そういう一面もあるのか。
「そしたら、グラーシュは引き続きウンディーネに終らせるようにコンタクト取っててね。これが終了したらそのままここを出るよ。」
“アルディ、エレナ、出発準備!”
“”御意“”
遅れて、リーチ伯爵と執事さんが到着した。
「俺たち、この魔法が終わり次第、速やかに出発します!」
「えぇぇぇ!」
「突然のことでごめんなさい。エラムも連れて行きます。お世話になりました。」
「ちょ、この人だかりは・・・」
「伯爵!!」
「はい!」
「名門リーチ家のリカルド・リーチ伯爵なら、収拾つきますよね?」
「そ・・・そんなぁ。相手は貴族だらけなんですよ。そんな簡単には・・・」
「簡単にやってくれなんて言ってないですから!お任せしますね。」
徐々にフォグパレスが収縮してきた。
グラーシュの説得が奏功したのだろう。
館の方から、アルディとエレナが、ストークとエラムを連れて駆けてきた。
「グラーシュ乗って!」
「はい」
「エラム、またよろしくね!」
俺もグラーシュも跨り、準備万端だ。
「良し、リーチ伯爵、お世話になりました。またどこかでお会いすることがあれば、よろしくお願いします!」
「は・・・・はい・・・」
「シュッパーツ!」
人込みを避けて、全力疾走。
あっという間にリーチ伯爵邸は見えなくなった。
バタバタの出発だったけど、無事にエラムを引き取って、出発できたから万事オッケー!




