第15話 王立図書館の所蔵品
「申し訳ございません。ご希望の本なのですが・・・お取り扱いがございません。」
そんな馬鹿な。
歴史書を探す最中に、シーデリア王朝に関する歴史書があって・・・。
そこには“創世以来の王朝”、“創造主よりシーデリアを賜りし絶対の王”など随分なことが書いてあったのに・・・。
それが本当なら、創世以来の本、有るだろ!
・・・
いかんいかん、落ち着いて、ヒアリング、ヒアリング。
「シーデリア王は、創世からの王家と聞いています。その所蔵となれば・・・」
「申し訳ございません。お取り扱いがございません。」
ふとリーチ伯爵を見ると、唖然としている。
俺は、ここで引き下がれんぞ。
誰かに察知されたら嫌だからと、王都中心街に入ってから極力控えていたが、光の粒子でサーチするか。
散布!
・・・
んんんんーっ!
あるやんけーっ!!
地下の所蔵庫に!
しこたま、古文書っぽいもんが!
・・・
落ち着け、俺・・・。
有るのに、出せないという事は、まだまだ焚書の危険があるって事なのか?
“歴史は繰り返す”っていうぐらいだから、歴史を学ぶことには凄い価値がある・・・
だからこそ、歴史書への介入は、非常に丁寧にしなければならないのに。
議論も検討もさせない“焚書”は、俺には意味が分からない。
生きた証を書に残す・・・。
焚書は、生きた証も消去してしまう所業だ。
その焚書を警戒しての“お断り“なのだとすると・・・仕方ないわな。
今ここで、伯爵からの要求でも、取り扱いが無いって言い切る理由も分からないでもない。
いわんや、突然現れた冒険者なんて・・・。
スパイかもしれないって疑わしいもんな。
ごり押して、何が何でも見せてくれ!なんて言えないな。
はぁ。
今回は、有るって分かっただけで引き下がるか・・・。
歴史の勉強も、色々と障害があるなぁ。
何かの縁があれば、見る機会が巡ってくるだろう。
あとは・・・レーゼン侯爵領の所蔵本か・・・。
「伯爵、ご協力ありがとうございました。帰りましょう。」
「え!・・・いいんですか。」
「いいんです、いいんです。それなりに収穫はありましたから。」
「ルラン殿がそういうなら・・・分かりました、帰りましょう。」
妙に聞き訳が良くなって気持ち悪さを覚えるが、とにかく、やるべきことが一つ潰し込めたから良しとしよう。
・・・
・・・・・
帰り道のリーチ伯爵は静かなものだった。
王立図書館の対応に、頭の中で疑問が巡っている様子だ。
打算的な思考から生まれた“俺の勧誘”よりも、自分自身の内側から自然に湧き出た“知的好奇心“に向き合っている姿は、個人的には好感を覚える。
壊れかけの馬車のきしむ音だけが響いていた。
話すことも無いし、窓の外を眺めていた。
「あ・・・あれ・・・」
執事さんの声に気が付き、目を向けると、窓の外を指さしている。
「どうしたんですか?」
「館の方角に・・・何か大きな・・・」
ん?
執事さんの指差す方向を眺めてみた。
「ちょ、あれ、何!?」




