第13話 事後処理
「特別対魔警備部の方ですか?」
「はい。こちらの方が馬車が襲われたと駆け込んできたので、急行したのですが・・・。」
「はい。終わりました。」
「ありがとうございます。対処された方はあなたですか?」
「はい。」
馬車からリーチ伯爵と執事が出てきた。
あれ?
さっきまでの怯えてたことが嘘のように、背筋が伸びて堂々とした様子だ。
流石と言った方がいいのか。
ここは顔を立てた方が良さそうだな。
それに余計なことを言って面倒くさいことになっても嫌だし・・・。
「リーチ伯爵、あとはよろしくお願いいたします。」
「うむ」
うむじゃないわ!
まぁ、いいや。
俺はその場から少し離れた。
少し経つと、執事が近づいてきた。
馬車の方を見ると、警察は帰っていったようだ。
「お待たせしました。馬車にお戻りください。」
「はい。」
俺がダガーで切った箇所は、キレイな切り口だが、馬車の骨組みを切ってはいなかったのでギリギリ走れる状態のようだ。
壊れた箇所を光の粒子で補修できるけど、話がややこしくなると嫌だからやめておいた。
どうせ移動はできる訳だし。
ただ、移動を再開すると、リーチ伯爵は俺を勧誘し始めた。
さっきまでの態度からは想像が出来ないほど、良くしゃべる。
しかし、リーチ伯爵からの話は全然頭に入らない。
仕方ないよね。
だって、俺がリーチ伯爵に魅力を感じてないんだもん。
こういう自分を自覚すると、結局、俺も人間なんだなって思う。
おじいさんと先生が「もう人間じゃない」って言ってたような気がするけど、いまだに分からない。
「リーチ伯爵、さっきの3人は、悪い精霊に取り付かれてたって特別対魔警備部の人、言ってました?」
「あ・・・、はい。」
話の途中なのに、無理やり遮って質問したが、失礼だろ!とも言わずに、答えてくれた。
ちょっとは、俺の事を認めてくれたのかな。
「警察には、正当防衛って伝えたんですかね?」
「はい。突然襲われて、馬車の中からでは正確な状況は把握できなかったが、走行中の馬車が激しい音と衝撃に遭い、命の危険を感じた事を説明し。」
「はいはい。」
「御者の叫びや馬車の窓から見えた様子から、判断して、防衛行動に出たと伝えました。」
「なるほど。」
「私の事はなんて?」
「ギルド会員のグラーシュ・カラーの従者と。」
「え?それで通るんですか?」
ん?
急にリーチ伯爵がにやにやし始めた。
「私は、名門リーチ家のリカルド・リーチ伯爵ですよ。そのくらい何とでもなりますよ。」
ははは、左様ですか。
・・・
・・・・・
「リーチ伯爵は、王立図書館に行ったことがありますか?」
「もちろんありますとも。」
「歴史に関する本を探しているのですが、有りますかね。」
「ありますよ。」
「ん?リーチ伯爵は歴史の本を見に行ったことがあるんですか?」
「それは無いです。私が調べるのは経済や経営に関する本ですかね。」
要するに、カネ儲けね。
いや、別に、カネ儲けも大切なことだと思う。
だって、リーチ伯爵、貴族だもんね。
そういえば、リーチ家の生業って何だろう。




