第12話 名誉挽回
気を取り直して、王立図書館で情報収集だ。
頼むから、昨日の都立図書館の様な事になって欲しくないんだが・・・。
一抹の不安を覚えつつも、執事さんに誘導されるまま、用意された馬車に乗り込んだ。
中には既に、リーチ伯爵が座っていた。
・・・
しゃべらない。
マイール山に居た時には、ここまではっきりと俺とグラーシュで態度を分けてなかったはずなのに。
まぁ、無理に俺と仲良くしてくれなくてもいいけど、ここまであからさまに態度を変えられると、こちらも取り繕い難い。
幸いここには、伯爵と執事さんと俺しかいないから、別に気にしなくてもいいってことなんだろうけど。
俺は、基本的に、嫌われても、俺が嫌いじゃなければ丁寧に接するスタイルだけど・・・。
ここまで、あからさまな相手を好きになる理由が、俺には無い。
程よく距離を取って・・・
ガシャーンッ!!
大きな衝撃音と共に、馬車が突然横揺れして、止まった。
おいおい、穏やかじゃないな。
なんだ?
何があった?
何かが横からぶつかったような・・・。
「ううううぅぅ」
「おおおおおぉぉ」
馬車の外からうめき声が、いくつか聞こえてきた。
なんか聞き覚えがあるような、無いような・・・
「ギャーーーッ」
御者の絶叫が聞こえてきた。
それに驚いたリーチ伯爵と執事さんは、怯えて動けなくなっている・・・。
あー、やっぱりか。
これ、以前朝方襲われた奴と同じような気がする。
落ち着いて馬車のカーテンを開けると・・・うわっ!
イっちゃってる目と目が合ってしまった。
嬉しくもないが、ビンゴだ。
例の取り付かれた感じの方が2名、馬車にしがみつきながら、思い思いに暴れている。
こういう時に、鑑定眼持ちのグラーシュが居ると、分かりやすいんだろうな~。
残念なことに、俺には、強めのお薬で気持ちよくなって暴れている方なのか、精霊に取り付かれている方なのか分からないんだよね。
「えーっと、伯爵・・・どうします?」
「どうもこうも・・・何とかしてください。」
「馬車、壊れちゃってもいいですか?」
「ルラン殿、何言ってるんですか!もう、ってか時間の問題ですよ。」
言われてみればその通りだ。
最初の衝撃を考えれば、ガタが来ていてもおかしくない。
「そしたら、この方々、仕留めますか?程よく痛めつけるだけにしますか?」
「仕留めれるなら、仕留めて下さいよ。早くーーっ!」
こういう時だけは無視しないんだな。
ダガーを抜いて、馬車のガラス越しに見える敵を、馬車ごと・・・
スパッ!スパッ!
うめき声が断末魔に変わり、一つ、また一つと消えていく。
馬車の窓からは見えないがまだ、微かなうめき声が聞こえた。
“偵察用の粒子を散布!”
・・・
見つけた!
馬車から飛び出して、見つけた敵に向けて、コンパクトハンドガンで・・・・
パン!パン!パン!
目標はうずくまって動かなくなった。
近づいて確認して、介錯の為に、もう1発。
パン!
辺りを見渡すと、両断されて動かない遺体が2つ。
「リーチ伯爵、終わりましたよ~。」
馬車に戻って声を掛けながら中を覗いて声を掛けてみた。
執事と一緒になって呆けた顔をしている。
御者と馬車を引いていた馬は見当たらない。
逃げたんかーい。
と思ったら、警察らしき人を連れて戻ってくるのが見えた。
一件落着かな。




