第6話 蔵書の奇妙な共通点
ってか、西暦9153年ってどういう事?
現世とここは違う・・・よね。
転生前の世界は魔法なんてなかったし。
それとも約7,000年を経て変わった?
ってか、“西暦”に凄い懐かしさと親近感が湧いたのに、なんだ、“王歴”ってのは?
どうせ利用者が俺しかいないんだから、管理人室に突撃して、マンツーマンでこの小さな10号棟の案内や、歴史をレクチャーして欲しいって思ったけど・・・。
あんだけやる気が無いんじゃ、頼み難いな・・・。
それでも、手当たり次第に初めて来た図書館で調べても、思うように知識に行き着けないから、効率が悪い。
ダメでもともと、管理人にお願いしてみるか。
「管理人さーん、すいませーん」
「・・・」
「管理人さーーーん」
「・・・」
ダメだ。完全に反応が無い。
こうなったら、やるしかないのか・・・。
管理人が管理人室で籠ってる・・・。
俺以外誰も利用者が居ない・・・。
と、来れば、アレをやればいい!
ぶんし・・・
「何か用ですか?」
でぇぇ。
あぶねぇっ!
「あ、すいません。歴史が全然わからないんで、何から読んだらいいかもアタリを付けれなくて、管理人さんにレクチャーして欲しいなって思いまして。」
「あんた、何言ってるの?」
「え?」
「管理人は司書じゃないの!司書じゃないから読書案内なんてしないよ。1人で好きにやって!」
・・・
言いたいことを言って管理人は引っ込んでしまった。
なんなんだ、この管理人は。
とにかくだ。
今がチャンスなことは変わりない!
“分身!”
本体は管理人室の監視。
2体作った分身体で、1Fと2Fを手分けして担当した。
ひたすら、気になったタイトルの本を手に取り、気になる部分を読んだ。
・・・
・・・・・
なんか・・・おかしい。
どの歴史の本も「我が国」というフレーズが無い点と、発行年が9000年以降という点で、共通している。
なぜだ?
本が書けるようになったのが、9000年以降だったわけじゃあるまいし。
ん?・・・
戦争か?
・・・
焚書か?
・・・
ビンゴ!
9000年に世界戦争があったようだ。
そして、このシーデリアは降伏した。
そこで、王政から民主制に代わり、王は形だけの存在になったようだ。
でも、そうだとすると・・・
「管理人さーん!管理人さーん!」
・・・
「何ですか、用事があるなら1回で済ませて下さい!」
「うぐ・・・ご、ごめんなさい。」
「で、用件は?」
「9000年よりも前の歴史の本って有りますか?」
「そんなもんある訳ないでしょ。」
「戦争で、焚書?」
「あんた・・・。さっきはふざけたことを言ってたから、相当な頓珍漢だと思ったけど。」
ちょ、それは図書館利用者に向けて言っていい事じゃないと思うぞ。
「今の人たちは、自分の国で焚書されたことさえ知らない人ばかりだというのに。」
「そうなんですね。」
「安い給料で、高い税金を払うために、ひたすらカネを稼ぐことに意識が向いていて、“本当の歴史を知って何になる?”っていう人ばかりだよ。」
「ところで、9000年より以前に発行された本は、どこにありますかね。」
「あんたも、なかなか芯があるね。あるとしたら・・・王立図書館か・・・」
「王立図書館で焚書されてない物があるんですか?」
「微妙だね。王立図書館というより、シーデリア王が私蔵している本の中にはあるだろうけど。」
王立図書館も望み薄か・・・
「全く当てがないなんて、残念です。」
「いや、もしかすると・・・」




