第2話 貴族になる方法
エラムを撫でていると、リーチ伯爵が馬屋に入ってきた。
「おはようございます。グラーシュ殿、ルラン殿」
「「おはようございます。」」
「本日の・・・予定は?」
「今日は、王立図書館か、都立図書館に行こうかと思ってます。」
「おぉ、それはイイですね!」
今日出発と言われなかった事に、リーチ伯爵が胸を撫で下ろしたのがよく分かった。
「王立図書館や都立図書館は私たちが、ふらっと立ち寄って利用できますかね。」
「都立図書館は大丈夫です。グラーシュ殿のギルドカードを見せれば容易に利用が出来るでしょう。」
「王立図書館は違うんですか?」
「王立図書館は、基本的に貴族のみが利用できます。ただ、貴族の同行者は1名まで入れますが、本を借りて出るためには連れて行った貴族の名前で借りる必要があります。」
そうか・・・。
っていうか・・・。
「貴族になるにはどうしたらいいんですか?」
「いくつか方法があります。ただ共通しているのは、シーデリア王からの認証を得る点です。」
「例えば、シーデリア王の依頼をこなしたり、行った仕事がシーデリア王に評価されて認証を得るパターンがあります。」
「王からの依頼があるんですか?」
「ありませんね。そういうパターンも予め法律に定めておかないと、いざという時にできないからという理由で定めてあるだけだと思います。」
「そうすると、自分の行った仕事が後に王の目に留まり評価されると貴族になれるかもしれないって事ですか。」
「そうですね。ただ、ご存じかと思いますが、シーデリア王は政治に参加できないことになっていますから、王の目に留まるってこともほとんどありえないでしょう。」
「え?王が政治をしないんですか?」
「え?・・・しませんよ。何言ってるんですか?」
ちょ、この前読んだ絵本とちょっと違うぞ・・・。どういうことだ?
「その話をすると話がブレるので、ここでは一旦保留しますね。」
「はい・・・。」
仕方ないな。まずは貴族になる方法だ。
「シーデリア王ではなく、公爵や侯爵の依頼をこなして、その実績を持って依頼人の推薦を受けて、シーデリア王から認証を受けても、貴族になれます。」
「他にも、税金とは別に一定額を国庫に納めることで、一定期間ですが、国政への貢献として貴族としての認証を得ることもできます。」
「ん?結局のところ、シーデリア王の目に留まるって事じゃないんですか?」
「単に、そう言う事にしているだけですよ。実際は、王の認証など・・・。公爵や侯爵の依頼をこなして推薦を得るか、納付額が条件を満たせば、貴族になれます。」
まさか・・・。
「カネで子爵を得てから、その立場を確立させるために、公爵や侯爵の依頼をこなして、貴族の立場を確立させる人が・・・」
「そうですね。ほとんどがそんな感じです。だから、この前のエルフの村の掃討奪還は、ツカサ公爵からの依頼でしたからね。名誉欲にかられた者も飛びついたわけですよ。」
「あれ?王都からの依頼って言ってたような気がしたけど・・・」
グラーシュを見ると、頷いていた。
「そうですね。率直に言えば、ツカサ公爵が依頼主だけど、報酬の出元が王都でした。」
「普通はツカサ公爵が依頼主ならば、報酬の出元もツカサ公爵となりますが、今回は報酬の規模が大きすぎて、公爵も報酬を出したくなかったのかもしれません。」
ケチか!




