第28話 伯爵邸の夜
リーチ伯爵は膝から崩れて、椅子に腰かけた。
ここで、命の恩人に対してゴリ押しするタイプだったら、もう関係を切ろうと思ったが、少しは話ができるようだ。
「シーデリアを一回りしたら、私と契約を結んでください。」
「条件次第ですね。もっと好条件が提示できるように、伯爵のご活躍とリーチ家の繁栄をお祈りします。」
「はい・・・。」
リーチ伯爵としては、今回の連隊の全滅と、グラーシュ一行からの拒否・・・ネガティブになる出来事が続いているだろうけど・・・。
こればかりはリーチ伯爵自身が乗り越えなければならない話だ。
結局、無自覚に誰かに依存して苦難から脱却したのでは、その後の苦難で自ら立ち上がることはできないからね。
せめて、他人への依存部分を的確に自覚した上で、活用して苦難を克服しているならば、まだいいのだけど。
一番いいのは、自らの力で、様々なことからヒントを得て克服することだ。
・・・
用意された料理もおいしく頂き、用意された部屋に移った。
流石は伯爵。
全員に個室を用意してくれた。
しかし、俺とグラーシュは、やることがある。
いや・・・、やる訳ではないんだけど・・・。
「グラーシュ、寝る準備が出来たら俺の部屋に来てね。」
「はい。」
・・・
・・・・・
俺が自室のシャワーを浴びて、明日の出発準備も済ませた頃、ドアをノックする音が聞こえた。
そっと開けるとグラーシュが立っていた。
「入って。」
「はい。」
グラーシュが部屋に入るなり鍵をかけて、アルディとエレナに警戒に当たる様に指示を出した。
何も起こる訳はないが、“念のため”だ。
「さて、グラーシュ、ここに魔導書とスキル本が1冊ずつある訳だけど・・・どうする?」
「両方やります!」
鼻息荒いな。
分かっている。
もちろん両方やるよ。
「どっちからがいい?」
・・・
「鑑定眼【軍】にします!」
そう言うと、グラーシュは勢いよく胸元を開けた。
おっぱいが躍り出てきそうだ。
「ちょっ・・・ちょっと待った!落ち着いて!」
「え?どうしました?」
「どうしましたじゃない、ちゃんと読んでからだよ。もしかすると別の方法で習得するかもしれないじゃないか。」
「あ・・・すいません。」
思い切りが良いのは、根っからの格闘家だからなのか?
「はい、どうぞ。」
俺が差し出すとグラーシュは受取り、俺のベッドに横になって枕元の灯りで読み始めた。
え?
俺は寝て待とうと思ったのに、先に入り込むかね。
「グラーシュ?」
「あ、すいません、お休みになってお待ちください。」
そう言うと、グラーシュはベッドの奥に移動し、手前を空けてくれた。
は?
グラーシュと一緒のベッドに入って、俺がお休みになれると思っていらっしゃるんですか?
そんなことは断じて無理です。
グラーシュをチラッと見ると、既に集中して本を読み始めていた。
ですよね~。
興奮しているのは俺だけで、おバカさん丸出しですね。




