第27話 伯爵からの提案
せっかく話を切り替えたのに・・・。
リーチ伯爵は、まだまだネガティブにどっぷり嵌まってしまっているってことか。
一方的に、こちらから努めてポジティブにしようとしても、なかなか難しいな。
「まぁ、良いじゃないですか。エルフの5つの集落からゴブリンとオーガは居なくなり、無事に集落は奪還できたわけだし。」
「あーっ!そうでした!!」
「え?」
「エルフからの連絡を聞けば、どうしても時系列が合わなくて・・・。」
「時系列?」
「そうです!私がグラーシュ殿と王都に戻っている間に奪還を始めましたよね?」
やば・・・
「あれ?そうなります?」
「エルフ側からの公式な殲滅完了日と、私が王都に戻った日から考えると、そう考えるのが自然なんですよ。」
村長・・・上手くやってくれたんじゃなかったのか。
「1日に1拠点だとしても成り立たないし・・・グラーシュ殿が戦場に戻った日に陥落してますよね?という事は・・・」
「エルフ側の記録に間違いがあったかもしれないですね~。」
「そんな・・・・そういう事にしておきますか。ただ、私が気付くぐらいだから、他にこの事実に気が付く貴族は居ると思いますよ。」
「そうですか。気づいた貴族は躍起になって探す?」
「どうですかね。顔が割れているわけではないですから。貴族の集まりに挨拶に行くとかしなければ、平穏なんじゃないでしょうか。ただ・・・」
「ただ?」
「私には顔が割れていますので。」
そう言うと、リーチ伯爵は、不敵な笑みを浮かべた。
ふふふ。
俺も不敵な笑みを返しておいた。
なにせ、俺は既にこの世界で生きる力を得ているからね。
貴族に屈する必要は無い。
「そこで、提案があります。」
リーチ伯爵が唐突に話を切り替えた。
「何ですか?」
「リーチ家の専属になりませんか?」
「専属?」
「はい。護衛が主な任務になりますが、採集や狩猟、討伐などに当たってもらうこともあります。」
グラーシュは決めかねて、俺を見てきた。
俺の答えは当然NO!
だから、躊躇なく首を振った。
それを見たグラーシュが力強く返事をした。
「お断りします。」
「え?・・・報酬は弾みますよ!」
お!
今後の相場感を養うためにも、報酬は気になるなぁ。
参考までに・・・。
「どのくらいですか?」
俺が質問をするや否や、脈有りと勘違いしたのか、リーチ伯爵の目に力が入った。
「基本報酬が年間10,000Gで、それに個別の案件ごとに成功報酬です。」
ん?
悪くないんじゃないか?
いや・・そうか!
アルディとエレナは召喚された存在だと思ってないだろうから、前世換算で、4人で山分けして、1人当たり年収2500万円か。
実際は、俺とグラーシュだから、1人当たり5000万円・・・悪くない・・・ような気がする。
でも・・・。
グラーシュに首を振って見せた。
「お断りします。」
突然リーチ伯爵は立ち上がった。
「どうしてですか?悪くない条件だと思いますよ。」
興奮するな、おっさん!
貴族っぽく立ち振る舞いを忘れるな。
いや、これが貴族らしい立ち振る舞いなのかもしれないな。
札束で納得させる感じ・・・。
グラーシュに俺の考えていることをすべて話している訳じゃないから、ここは俺が答えるとするか。
「私たちは、まだまだ未熟で、このシーデリアの事でさえも、まるで知りません。当分は旅をして見分を広げる予定です。」
グラーシュも俺の発言に合わせて力強く頷いてくれた。




