第24話 銀行到着
再びやる事が無くなって、眠くなってきた。
隣で延々と水の針を生成しながら一喜一憂するグラーシュには申し訳ないけど。
エレナの背中にもたれ掛かりながら、ついつい寝てしまった。
・・・
「ルラン様、シーデリア銀行に到着しました。」
グラーシュの声で気が付くと、目の前には石造りで圧倒的な存在感を放つ大きな建物があった。
周囲を見渡すと、シーデリア銀行は広大な芝生の中にポツンと立っている。
襲撃とかを考慮して、防犯上の理由から、隠れる場所の無いようにしているのだろう。
ただ、そんなことはさておき、この芝生の上でゴロゴロしたい。
そう思うと、大金を受け取る直前だというのに気合が入らず、眠気に襲われる。
なんでこんなに緊張感が無いんだろう。
日本円換算で5億だって言うのに・・・。
前世で何度も宝くじの当選を夢見て、当たったらどうしようって予習していたのが功を奏しているのか?
違うな。
絶対に誰も手を付けることができないゲートの中に引換券を保管しているから、安心して眠気に襲われていられるんだろう。
ただ、この芝生でゴロ寝した不審者って認定されて、引き換え拒否されても困るから、我慢我慢。
入口には、屈強な警備兵が立ち、すぐそばに仰々しい守衛所が2カ所もあった。
流石、国内最高峰の銀行だ。
「どのような要件でお越しですか?」
「現金の受け取りに上がりました。」
「当行は、一般のお客様のご利用はお断りしていますので、お引き取り下さい。」
はぁ、仕方ない。
そっとグラーシュに耳打ちした。
グラーシュは、ハッとして、おもむろにギルドガードを見せた。
覗き込んだ警備兵の態度が豹変した。
「申し訳ございません。現金の受け取りでしたよね?」
「はい。」
「ご存じかと思いますが、入店は2名までとなります。」
俺はアルディとエレナに待機を指示した。
「私とルランさ・・・ルランの2名で。」
グラーシュ、慣れないかもしれないけど、現金の受け取りまでは、頼むよ。
「さぁ、こちらへどうぞ。」
前後を警備兵に固められて入店した。
これは、俺たちへの警戒じゃなくて、護衛のつもりなのかな・・・息苦しくてかなわないんだが。
「いらっしゃいませ」
糊のきいたスーツ姿の男性職員が近づいてきた。
「本日は現金の受け取りでお越し下さったという事ですが。」
「はい、先日ギルドで現金の引取の書類を頂いたのですが、高額なため、こちらで受け取るのが一番間違いないと思ってきました。」
「かしこまりました。金額はどのくらいでしょうか?」
「50,000Gです。」
「かしこまりました。こちらへどうぞ。」
そう言うと今度は応接室へ通された。
天下のシーデリアだと言ってもこの金額をカウンターでやりとりする訳ないか。
ってか、ここは一般客が使わないんだから、取引は全て応接室なんだろうな~。
・・・
「早速ではございますが、書類を拝見してもよろしいでしょうか。」




