第23話 銀行までの暇な道中
武具屋を後にした俺たちの次の目的地は、シーデリア銀行だ。
なんにせよ、道中が暇だ・・。
王都中央市街地だから、色々な店が目移りするんだが、お金を持っていないから、なんか白けてしまう。
大金を払って、魔法やスキルを買ってしまったからなぁ。
そうだ!
「グラーシュ、ウォーターニードル、試してないよね。」
「はい、まだです。」
「ストークの背に乗っていても、手は空いてるから、できるんじゃない?」
「そうですね。・・・やってみますね。」
そういうと、グラーシュが右手に力を込めた・・・ように見えた。
すると、水で出来た棒が生れた。
「ん-、棒・・・だね。まだ、針になってないように見えるけど。」
「ごめんなさい。」
針とは形容し難い不格好な水の棒は、ふっと消えた。
「ウォーターニードル!」
今度はグラーシュの気合に呼応して、水で出来た針っぽい物が出来た。
「お、今度は、良い感じじゃん!」
「はい。」
「これは・・・ウンディーネの協力有り?」
「あ、ごめんなさい。もう一回試してみます。」
そう言うとまた水の針は、ふっと消えた。
「ウォーターニードル」
「おおお!凄いじゃん、ピンピンに尖ったの出来たじゃん!」
「はい!」
「ごめん・・・これって、飛ばせるの?投げるの?掴んで刺すの?」
「どれもできそうですよ。」
投げれるんだ・・・棒手裏剣が売ってなくて良かった~。
「マナへの負担は?」
「ほとんど感じません。水属性の加護でウンディーネのサポートがかなり効いているんような気がします。」
そうか・・・。
「それなら、熟練度アップのために、銀行まで、ずーっと、どんどん作って!」
「え?・・・は、はい。」
どんどん作ってって言われてもピンとこないか・・・。
俺も前世では、興味を持ったことを調べたり学んだりしたことがある。
でも、いまいち修得に集中できないし、なかなか知識の吸収が進まなかった。
だから、その分野の資格試験の合格を努力目標にしてた。
そうすることで、自己満足に終わらせず、取得できれば、他人からも認められて、自己肯定感が上がると考えたからだ。
受験が近づくにつれて、プライベートの時間の使い方も上手になったし、修得への集中力も増していった経験がある。
まぁ、グラーシュは・・・戦闘と隣り合わせのこの世界に居るから、資格云々関係無く、積極的に習得する気はありそう。
だけど、何を目標に努力したらいいのか分からず、ふわふわしているように見えた。
「できるだけ真っすぐ、全く歪み無く、できるだけ細く、髪の毛よりも細くをイメージしてやってみるのはどう?」
「はい・・・。」
魔法を使えない俺が言うのは気が引けるけど、良かれと思って、ついつい、提案しちゃった。
やるからには努力目標があった方が、向上するからね。
突然の提案にちょっと困っているようだけど、奏功すればいいなぁ。




