第22話 老舗の境遇
顔が頑固おやじに戻った。
ちゃんと話してくれそうな雰囲気だ。
「ここまで来てくれたってのに悪いが、この界隈には居ない。」
「どこに?」
「近くにバカでかい、武具から馬具から道具まで、なんでもござれの量販店があっただろ?」
「はい。」
「アレを立てるために、ボルカールの店も邪魔だって言われて、追い出されちまったのさ。」
「強制的にですか?」
・・・
「あんなもの・・・強制としか言えない。」
「気の弱い店主から順に買収して・・・」
「カネが支払われないから、引き渡しに応じて引っ越した連中が、早く払えって声を上げたら、まだ予定地全ての買収が済んでいない!って突っ撥ねられたらしい。」
「売った奴も売った奴だ。寄ってたかって、買収に応じない連中を吊るし上げて、嫌がらせまでする始末だ。」
「そんなの、出ていくしかないだろ?」
「いったい、どうなっちまったんだ。この王都は!この国は!」
・・・
「え?あの量販店、公立なんですか?」
「すまん、力が入っちまった。あの量販店は私立だ。どこの馬の骨ともわからねぇ金持ちがいきなりやって来て、買い漁り始めたんだ。ただ、それを王都も国も見逃したんだよ。」
「で、あの量販店が開業してから、申し訳程度の調査したり、法律を作って・・・。そんなことじゃ、一流の老舗は守れねぇってのに・・・。」
そういうことか。
で、それにボルカールも巻き込まれたんか。
「ボルカールさんは最後まで残った側ですか?」
「そうだ。でも、札束で引っぱたかれて、追い出されたのさ。ひでぇ話だ。」
「で、今は?」
「バカバカしくてこんなところに居られるかって、出て行っちまった。」
「引っ越し先は御存じですか?」
「あぁ、そうだったな。すまんすまん。確かミーヴに行ったはずだ。」
「ミーヴですか・・・。」
「あそこはこの国で一番の港町だから、異国人なら本物が分かるだろうってさ。」
「そうでしたか、住所って分かりますか?」
「そこまでは聞いてねぇ。あいつのことだから、ミーヴの中で転々としながら水の合うところを見つけてから、店開いてるんじゃないか。」
「何しろ、この国の鍛冶屋なら知らないやつはいない名匠だからな。どこに行っても何とかなってると思うぞ。」
「わかりました。ミーヴを楽しみながら探してみます。」
「おう、そうしてくれ。・・・その前に、何か買ってけ!」
「あ、すいません・・・そしたら・・・」
「水属性の杖ありますか?」
「なんだ?にいちゃん、買う気あるのか?嫌がらせのように変な物を言い出しやがって。」
「無いですか?」
「あのなぁ、水属性ってのは攻撃に向かねぇんだ。それを武具屋で探すなんて・・・。おまえみたいな客は、早くボルカールんところに行っちまえ。」
「ははは、そうします。貴重な情報ありがとうございました。」
「はいはい、また来てな。」
なんだかボルカールに会うのが楽しみになってきた。




