第5話 VIP用玄関
受付の邪魔にならないように、少し離れたところで待つことにした。
・・・
・・・・・
「お待たせしました。こちらへどうぞ。」
職員さんが声をかけてくれた。
建物の外に出て裏に回ると、仰々しい玄関があった。
このギルドの建物は裏にこんなものがあったのか・・・有名ホテルの玄関のようだ。
正面広場から入る一般玄関と全然違うやんけ。
このVIP用玄関を見て、公式ギルドと繋がりが有ると言われていたことに、今更ながら納得できた。
玄関から入り、ロビーを歩いた。
両脇にいくつも応接室がある。
通されたのは、一番奥の応接室だった。
ソファーとテーブル、装飾残った調度品・・・徹底してるな。
促されるまま職員さんと対面で座った。
「貴族の方などVIPからの依頼が入った場合、ここで、依頼人の貴族又はその代理人と打合せをして頂くことになります。」
「はい。」
なんだか居心地が悪いのは、俺がド平民でマナーも何も知らないからだろう。
「このまま少々お待ちください。」
そう言うと職員は部屋から出て行った。
何だろう。
・・・
戻ってきた職員は、おもむろにテーブルに御盆に乗った紙切れを出してきた。
紙切れ一枚に酷く仰々しいな。
「今回の報酬になります。どうぞお受け取り下さい。」
「報酬?」
「エルフの5つの集落におけるゴブリン及びオーガ掃討と集落の奪還の成功報酬になります。」
「すでにリーチ伯爵からは辞退・・・というか、リーチ伯爵の取り分をグラーシュ様に上乗せするように指示がありましたので、予めご了承ください。」
「はい・・・。」
グラーシュは、覗き込んだ直後、固まってしまった。
「どうしたの?」
慌てて俺も覗き込んだ。
小切手?証券?のようだ。
額面は・・・・50,000G!?
は?
「どういうことですか?」
「どうって・・・。もともと2,300名で構成された連隊へあてられた成功報酬で、目的を達成した生還者で山分けと事前に案内したとおりです。」
「2,300名で一人頭20G、指揮する貴族が含まれるので、総じて50,000Gです。ご安心ください。既に税金を差し引いてこの金額ですから。」
なるほど、そりゃ安心だ・・・じゃない!
「まさか、目的を達成して生還したのがグラーシュ様御一行だけになるとは、誰も想像していなかったでしょうね。」
そりゃそうだ。
普通に考えれば、全滅するわな。
なぜグラーシュ一行だけ残った!?ってなる。
何なら連隊員が3割くらい戦死したら戦線を維持できずに撤退する。
それが、グラーシュ一行だけで当初の目的を達成とか・・・。
「聞けば、当初見込みのゴブリン・オーガの数の数倍は居たみたいじゃないですか。」
それだけじゃないですけどね。
手練れの冒険者を集めたつもりでも、中身は精鋭だけじゃなかったし・・・。
それだけじゃなく、仲間割れの算段までしているんだもん。
その状態で、いざ始めて見たら、敵の数が見込みと全然違かったから、こんな大惨事になったんだと思う。
緊張感をもって、突然目の当たりにした情報に迅速に対応する姿勢が連隊としてできていれば、速やかな撤退もあったと思う。
怖いね~、正常化バイアスって。
そんなことはさておき、この紙切れ、どうやって使うんだろう。
「これは、銀行に持ち込めば、金貨としてもらえるんですか?」
「はい。でも50,000Gとなると、とても持ち運べるような重さじゃないですよ。」
「ははは、分かってますよ、そんなこと。」
でも、銀行に預けておくよりも俺がゲート内に入れて管理した方が間違いないんだよね~。
それに、グラーシュは家計簿レベルのお財布管理とやりくりが上手だろうけど、この額になると扱うのが苦手だと思う。
グラーシュを見ると頷いている。
俺が受け取るってことで良さそうだ。
いつまでも露出してても良くないし・・・。
「それでは有難く頂きます。」
俺は手を差し伸ばして、自分の裾に入れた。
そのままゲートを通じて収納っと。
「ふと思ったんですけど、この金額を一度に扱う銀行なんて、そうは無いですよね?」
お陰様で200話です。
いつもありがとうございます。
これからも微力ながら頑張りますので、よろしくお願いします。




