第1話 南の英傑に再挑戦
エラムの引き取りが最優先だから、王都の西から入らずに、南の市街地に直接入ることにした。
西の市街地を観光して、中央市街地に入り、ボルカールを探して南下し、南の市街地に入りたかったけど、グッと我慢した。
なぜなら、リーチ伯爵が“気合を入れ直した”らしいからだ。
俺は、世の中には、気合を入れていい人と、気合を入れてはいけない人が居ると思っている。
そして、リーチ伯爵は、絶対に気合を入れてはいけない人だと思っている。
・・・
嫌な想像をするのは止めよう。
現実になると嫌だから。
・・・
マイール山を下りて2日で南の市街地入口が見えてきた。
道中は穏やかで、トラブルも起きなかった。
そのお陰で、グラーシュの魔法訓練の相手をし続けることができた。
まずはケイコのおばあさんから教えてもらえた水の召喚だ。
いざ旅を始めると、水の召喚が物凄い便利だと分かった。
ウンディーネの補助もあるからだろうけど、馬を含めて全員の飲料水に困らなくなった。
そして、日常的に高頻度で使うからこそ、水の加護の有難みがよく分かった。
他の加護は、どのくらい何が楽になるか分からないけど、是非欲しいものだ。
俺は多分・・・修得できないんだろうけど・・・。
道中のおじいさんと先生との時間は、1日目がフクロウとのじゃれ方講座。
2日目が、ヘビとのダンスを見せられたり、ヘビの扱い講座だった。
平和だとこうなるよね。
そういう時間もすごい重要だ。
ただ、二人とも、かなり慣れてきている様子だから、そろそろ他のペットも欲しいって言い出さないかちょっと不安だ。
多頭飼育で、飼育環境が崩壊すると、飼い主側も飼われる側も不幸だからね。
スペース的にもいくらでもありそうだし、主従がはっきりしてるから心配は無い。
だからこそ、次って言い出しそうなんだよな~。
「さてと、エレナ、オルフを収納するよ。俺と一緒にラムーに乗ってくれるか?エラムに俺が乗るまで、二人乗りで悪いけど。」
「分かりました。」
念じた瞬間、オルフが俺の中に収納された。
で、エレナもラムーに乗った。
万が一に備えると、近接戦闘のエレナが前で、俺が後ろなんだけど、なんかドキドキする。
エレナはローブの下が、極小下着アーマーって言った方が良いようなビキニアーマーしか着ていない。
道行く人には分からないんだけど、俺は知っている・・・。
コートの下は裸・・・ってのとは違うんだけど・・・。
コーフンする。
市街地に入って南の英傑に着くまでだ。
平常心、平常心。
俺はローブを着た人の後ろに乗っているだけの人・・・。
そう言い聞かせて南の市街地の移動を始めた。
・・・
・・・・・
何事もなく“南の英傑”に到着できた。
ゴブリンとオーガに占拠されたエルフの集落を攻撃するよりも、ドキドキしたぞ。
「グラーシュ、出来るだけ早くエラムを引き取って来てね。」
「はい!」
返事をするや否やグラーシュが受付に駆けて行った。
そのままは気まずいから俺がラムーから降りて、ストークに乗ろうとしたら、怒られた。
“おまえじゃないだろ!”って、言われたような気がした。
そうですね。
俺がラムーに乗り、エレナがストークに近づくと、ストークはイイ子にしている。
そして、エレナが跨ると、なんだか上機嫌だ。
なんじゃそりゃ。
・・・
帰ってくるのが遅いなぁ。
ちょっと様子を見に行くか。




