第24話 出発前のお客様
ドンドンドンッ!
「おはようございまーす。」
聞き覚えのある声と玄関を叩く音で目が覚めた。
この声は・・・
村長だ。
飛び起きて出ていくと、村長とおばあさんが話をしていた。
「今朝出発すると聞いて、慌てて来ました。お約束していた件の御話をしようと思いまして。」
律儀な村長さんだな。
俺は村長を信じ切っていたから、別にお願いしたことの報告は聞かせてくれなくても良かったのに。
「私の水属性の取得も、グラーシュの水属性の取得も、しっかりその機会を提供して頂きましたよ。あとは・・・」
「私のリーチ伯爵との調整です。」
「その後、どうなりました?」
「ご希望通り、グラーシュ一行が対応したことになっていますが・・・」
「リーチ伯爵も戻ってから、エルフ側の使者が行くまでは非常に肩身の狭い思いだったようです。」
そりゃそうだよな。
連隊は全滅して、連隊長だけおめおめと帰ってきたのでは、貴族の遺族からも白い目で見られるだろうし・・・。
「残した部隊に作戦を渡して、自分は次の部隊を援軍として派遣するために戻った・・・しかし、残った部隊の奮闘と、エルフ側との共闘により、なんとか掃討・奪還できた・・・。」
「え?」
「その中心にいたのがグラーシュ一行だった・・・って流れで纏めました。」
「そんなんで纏まったんですか?」
「いえ、正直申し上げますと、纏まってなんていないですよ。」
「ですよね。」
「でも、事実として5つの集落における掃討と奪還は済んでいますし、マイール山のエルフの公式発表もある・・・結局は“政治”なので。」
「お膳立ては整っていると?」
「はい、そして、伯爵クラスの貴族は、政治の出来る立場ですから。」
「ははは、そうですか。」
「伯爵も今回の一件で少々心を入れ替えたようで、“残された自分の使命”と気合が入っていましたよ。」
その気合、空回りしていなければいいんだけど・・・。
「調整ありがとうございました。」
「本当にこれだけでいいんですか?」
「いいですよ。っていうか、私の報酬よりも、生け捕りにしたゴブリンやオーガから何かわかりましたか?」
「あ、その件はまだ調査中でして・・・ただ・・・」
「ただ?」
「気になることがあるんですよ。」
「差し支えなければ、教えてください。」
「ルラン様たちなら大丈夫だと思うので伝えますが、なんだか、この妖精たち、人工的に作られたのではないかという声が上がりまして・・・。」
そうだった、ゴブリンもオーガも妖精だった。
「妖精って人工的に作れるもんなんですか?」
「私も詳しくわからないので何とも言えないのですが、乱暴に言ってしまえば、人間に精霊に取りつかせれば妖精は作り出せますから。」
加護があったり、取りつかれたり、この世界は精霊との関係が生活を大きく左右するんだな。
精霊の影響を受けていない俺は、安定していていいけど。
グラーシュは今のところ水属性の加護を受けているということは、御多分に漏れず“精霊に影響される存在”というわけだ。
「水属性の加護があると、精霊に取りつかれなくなるとかあります?」
「そうですね。水属性の加護があれば、ウンディーネに取りつかれるということは無いです。それに、他の属性の精霊に取りつかれることも少なくなりますね。」
「無いわけではないんですね?」
「はい。本人の意識が弱まれば隙は出来てしまいますし、水属性の加護があってもウンディーネが弱まっている環境や、そもそも付いていない状況になってしまえば、有り得ますね。」
ということは、3つの加護を得ればほぼ大丈夫ってことか。
「ん?村長さん、ちょっといいですか?」




