第20話 俺の魔法の見通し
おばあさんからの魔法指導が一通り終わった。
グラーシュはまだまだマナに余裕があるのか、元気そうだ。
「ちょっとごめん、グラーシュのガストジャベリンを受けてみたいんだけど、良い?」
「はい!」
「手加減抜きでいいからね。」
吸収しちゃえばいいから。
「はい!」
・・・
グラーシュのガストジャベリンは、ケイコのと比べると、習熟度の違いから、物足らなさを感じた。
「これを1日何回くらい使えそう?」
「5回くらいだと思います。」
「今日の残りは?」
「1回です。」
ガス欠には見えないけど・・・今のとこ色は燃費も良くないってことか。
「見てないけど、オーガくらいなら貫通できるんでしょ?」
「はい、できそうです。」
「まぁ、いいんじゃない、基本的には格闘術で戦うわけだし。」
「そうですね。」
グラーシュは、近距離で十分強いのに、中距離攻撃まで出来るなんて、サイコーじゃん。
「そしたら、熟練度を上げるためにも、1日5回、きっちり使い切ろうね。俺が受けるからさ。」
「はい。」
それはそれとして、ケイコとグラーシュからガストジャベリンを受けて分かった事がある。
おばあさんの解説にあった“マナの変化物“と”マナで召喚した物“で分類するなら、ガストジャベリンはマナの変化物だ。
そして、俺はマナの変化物を吸収した場合、何も残らない。
風圧も、エネルギーが残らないのは分かる。
効果が切れると、マナに変わるからだ。
しかし、そのマナも残らない・・・。
本当は残っているのかもしれないけど、自分の使用できるストックに溜まっている気がしない。
でも、無くなっている感触も無い・・・。
「おばあさん、魔法に使うマナは、マナのまま放出できるんですか?・・・例えば、マナのまま人から人へ受け渡したりとか?」
「どちらも、できますよ。」
よし!
「すいませんが、私にマナを送り込んでみてくれませんか?」
「はい。いいですよ。」
そう言うとおばあさんが俺の手を取ってくれた。
・・・
やはり実感が無い。
「今、どのくらい頂きましたかね?」
「そうですね。ガストジャベリンで2回分くらいでしょうか。」
「え!結構頂いちゃってますね。もう大丈夫です。」
そう言うと、おばあさんは手を放してくれた。
困ったな。
これ・・・俺の魔法は、絶望的なんじゃないか。
属性の加護も得られないから、精霊に補助されることも無いし・・・。
凹むなぁ。
・・・
俺が凹むときって、大体の場合、上手くいっていない事ばかりに目を向けるからなんだよね。
そうして前世で数多くのチャンスを棒に振ってきたような気がする。
その経験から学んだことは、“上手くいったこと”を“上手くいかなかったこと”と同じくらい考えることだ。
上手くいかなかった事の方が重要だった場合とかでは、心掛けても中々できないんだけど・・・。
で、今回の成果はと言うと・・・。
グラーシュが3つ目の属性を手に入れて、しかも魔法も覚えた、それも2つも!
つまり!
これは!!
間違いなく前進!!!
「一休みしてから、うちに帰りましょうかね。」
おばあさんに甘えて、木陰で休むことにした。




