第19話 使用上の注意
散歩を終えて戻ると、満足げなグラーシュが居た。
修得出来たっぽいな。
「ガストジャベリンできるようになった?」
「はい!」
なんか、この旅でグラーシュは出来ることが増えて、どんどん強くなっているなぁ。
良い事だ!
「グラーシュは筋が良いですか?」
本日の魔法の先生であるおばあさんに聞いてみた。
「筋は、とってもいいですよ。」
「ルランと違ってね。」
ケイコの一言が、メンタルに来るわ~。
まぁ、少女の余計な一言をいちいち真に受けていても仕方ないから、そこのところはスルーするとして・・・。
エルフのおばあさんが認めてくれてるんだから・・・。
「グラーシュは水の属性の加護を得ました。もし宜しければ、水の魔法もグラーシュに教えてもらえませんか?」
「是非!」
グラーシュも前向きだ。
「そうですねぇ・・・分かりました。それならば、1つ教えましょう。」
「ありがとうございます。」
「でもその前に、1つ知っておいて欲しい事が有ります。」
「何でしょう。」
「緑魔法の場合は分かり難いのですが、水魔法だとちょっと注意しなければならないことが有りまして。」
「例えば、マナを使って、水を作った場合と、マナを使って水を喚んだ場合は、効果が切れた時に大きな違いが生れます。」
「ん?どういうことですか?」
「マナを使って水を作った場合、効果が切れると水は無くなります。」
「一方で、マナを使って、実物の水を喚んだときは、効果が切れても喚ばれた水は残ります。」
「それってどんな違いになるんですか?」
「具体的に考えてみましょうか。」
「はい。」
「例えば、喉が渇いたとします。その時にマナで水を作って飲んだ場合、効果が切れた瞬間に渇きに襲われます。」
「あ!そう言う事ですか!」
「マナを使って、水を召喚すれば、喚ばれた水は残ります。」
「これから先も旅が続くなら、水を召喚できるようにすると便利でしょう。」
「という事は、水の召喚を教えて下さるわけですね?」
グラーシュが食い気味におばあさんに聞いた。
「もちろんです。」
「ただ、水の召喚と言った場合、どこの水を召喚するかが問題になります。」
「通常は、召喚する為に、かなり具体的なイメージを持つ必要があります。例えば、自分の実家の井戸の水・・・という具合です。」
「そこの水か枯渇してしまえば、もう召喚は出来なくなります。」
「ただ、グラーシュさんは水の加護を受けましたので、ウンディーネに聞けば水の在り処を教えてくれますし、召喚の際にも補助をしてくれて、具体的なイメージ無しで召喚できるはずです。」
「それは便利だ!」
「レズメン・ナキーマイム!」
おばあさんが右手を出して唱えると、手のひらに魔法陣が現れて、水が湧き出てきた。
「おぉぉぉ。」
ついつい、感嘆の声を上げてしまった。
「身近にいるウンディーネとの協力を意識しながら、唱えてみて下さい。」
「はい!・・・レズメン・ナキーマイム!」
グラーシュが見よう見まねで右手を出して唱えた。
すると、おばあさんと同様に水が湧き出てきた。
「水属性の加護がある分、容易に出来ましたね。」
「はい。ありがとうございます。」
これは・・・“加護”は、すごいぞ。
俺には無いけど・・・。




