第18話 選手交代
ケイコはマナ欠になってしまって、もうガストジャベリンを使えなくなってしまっていた。
って事は、魔法って、弱いスペルでも、マナをたっぷり込めて力いっぱい撃てるって事かな?
だとすると、コモン魔法も馬鹿にできないな。
スキルや技術も同様の傾向があるのかもしれないって考えた方が良さそうだ。
そんなことよりも、俺は、なんで風属性が分からなかったんだ?
おばあさんの言っていた通り、他の属性を持っていないから、理解のきっかけが無くて、無理だったのか?
ただ、教えるのが無理って思ったら、もう教えることが苦痛になっちゃうもんなんだよね~。
新入社員に教える人事教育担当者が仕事として取り組んでいてもそうなんだから、ケイコやおばあさんに、何度も何度も、俺が修得するまで付き合ってとは言えない。
だったら、グラーシュがガストジャベリンを覚えて、その熟練度を上げつつ、俺が受けた方がまだ良さそうだ。
だから・・・
「グラーシュ、俺の分も頑張ってね。」
「はい!」
「ケイコはもう続けれそうにないので、私が変わりますね。」
そう言って、おばあさんがケイコと交代した。
「そうですねぇ、まずは風の槍に触ってもらおうかしら。」
おばあさんは、グラーシュに近づき、手に風の槍を作った。
さっきの俺に向けられたケイコの全力ものとは全く違う。
グラーシュなら容易に折れそうな位の細い槍だ。
恐る恐る触ったグラーシュが、おばあさんの方を見て力強く頷いた。
「え?そんなに簡単にわかるもんなの?」
「風属性を修得した者が、落ち着いて接すると、案外簡単に分かるものなんですよ。もちろん、個人差がありますけど。」
「そ・・・そうなんだ。」
割り切ったはずなのに、がっかりした。
俺もこの場で風属性を修得して、共有したかった。
「もう、出来るでしょう。さっき受けた風圧で風の槍を飛ばすイメージですから。」
「はい。」
「あの木に向かって、試してみましょう。」
「はい!」
俺は用無しになってしまったので、当たりを散策することにした。
と言うと聞こえがいいが、単に不貞腐れてぶらぶら歩いているだけだ。
なんでなん・・・。
魔法の無い世界で生まれ育ったから、魔法の基礎となる“属性”ってのが認知できないのかな。
それとも、“属性”と全く縁も所縁もないのか。
魔法のある世界に転生して来たのに、魔法が使えない・・・
そんなことって有り?
ネガティブに考え出すと、止まらないもんだ。
考えても分からない事は、考える知識が不足してるか、考える力が不足してるんだ。
こちらに転生して来て、今はそのどちらも不足しているような気がする。
もっとこの世界のことが分かったら、打開できるかもしれない。
この世界を知る・・・。
そうなると、次の目的地は、ミーヴの魔法学校か、王都中心部の図書館だな。
王都中心街の図書館は、都立図書館と王立図書館だから、分身体だと何か引っかかりそうだな・・・。
ひとまず、魔法の流れでミーヴ侯爵領を通って、ルーロック山に行き、風の加護を修得するか。
ひょっとすると、風の加護なら・・・。
修得できればいいんだけど。




