第16話 風属性の何たるか
「遅―い!」
玄関を開けるなり、そう言いながら、ケイコはグラーシュを見るなり飛びついた。
おばあさんも杖を装備して待っていてくれた。
ベテラン魔法使いのようだ。
「遅くなってしまってすいません。よろしくお願いします。」
「はいはい。それじゃあ、ちょっと森に入って、魔法やりましょうか。」
・・・
・・・・・
森に入って少し歩くと、開けた場所が見えた。
「そこー!」
グラーシュに抱っこされているケイコが指を差した。
「はいはい。ここでやりましょう。」
いよいよか。
気合が入ってきた。
属性の無い俺でも、このガストジャベリンの修行を通じて、風属性とガストジャベリンを修得できるかもしれない。
「お二人とも、魔法を学ぶ機会が無かったとのことですから、基礎から始めましょう。その方がガストジャベリンの修得も早くなりますので。」
「「はい」」
「よろしい。」
「ケイコもいい機会だから、一緒にもう一回学ぶんだよ。」
「えー。」
・・・
「まずは、魔法って何?というところからです。」
「はい。」
「魔法は、マナを使うことが必要になります。」
「基本的に、魔法は、自分のマナが特定の属性の魔力に変化し、その後に狙った作用になります。」
そうなんだ・・・。
「例えば、ガストジャベリンでは、マナを風属性の魔力に替えてから、相手の動きを制する突風と、高密度の空気の矢とそれを飛ばす空圧に生み、作用させます。」
「どうやって属性を得るんですか?」
「その属性を“体感”するのが、手っ取り早いです。」
「まさか、今回は・・・。」
「ガストジャベリンを受けるのが、良いでしょう。その方が、ガストジャベリンの修得にも近道ですから。」
「魔法も体感する方が、手っ取り早いんですか?」
「はい。」
「分かりました・・・。」
「ただ、ガストジャベリンは要素がいくつもあるので、まずは最初の相手の動きを止める“風圧”で、風属性を感じ取ってもらいます。」
「良かった~。」
「では、始めましょう。」
おばあさんとケイコ、俺、グラーシュで正三角形に配置した。
距離は10mくらい。
「いくよー、おねえちゃーん!」
ケイコが、グラーシュに向けて、右手をかざした。
次の瞬間、グラーシュの服がなびいた。
魔法で風を送ってるんだろう。
手加減されているようで、グラーシュは仁王立ちでそれを受けていた。
「分かったー?」
「何となく・・・。」
「土属性や水属性を持っているから、属性を持つって事が分かり易いんでしょうねぇ。」
何、その情報。
それだと、俺が修得に苦労するみたいな感じじゃん・・・。
「じゃ、次ルランねー。」
「よろしく~。」
俺に向けて同じようにケイコが右手をかざすと、風が来た。
・・・
ん?
何が分かるんだ?
風に吹かれていることくらいしか分からないぞ。
「もうちょっと強くしてくれる?」
「うん。」
んー、分からん。
「ちょっとごめん。弱くしたり強くしたりして~」
「うん・・・。」
あー、全然、分からん。
「ルラン様、風自体ではなくて、風の質というか、風の奥というか、ちょっと集中してみて下さい。」
「お、おう。」
・・・
いや、どーも分からない。
困ったな。
「おばあちゃん・・・」
「なんだい?」
「ルランに、ガストジャベリン、やっちゃう?」
「そうだねぇ。それが良いかもねぇ。」
「え?」
ちょ、話が飛躍してませんか。
また始まったばかりじゃないですか。
「もちろん手加減はしますが、最低限ガストジャベリンとして成り立つための基礎威力があります。それ以下には加減できませんので。」
やる気満々ですやん。
信じて受けてみるか。
「はい、お願いします!」




