第7話 飛び退いた訳
「いつも通り、草木のあたりに、ちっちゃいおっさんが見えました。」
「お、おう、そのちっちゃいおっさんはノームだな。土属性の精霊だ。」
「はい。」
「それ以外は、ちっちゃなきれいな女の子が見えました。」
「それが、水の精霊のウンディーネじゃないか?」
「私を見て笑っていました。笑い声が近いと思って自分の体を見たら、そのウンディーネが笑いながら私の体を触っていて・・・」
それで飛び退いたのか。
「もしかして、微笑みかけていたってことは無い?」
「・・・」
「初めて見るもんだからビックリして、冷静に見れなかったって事はないかな?」
「・・・」
「そしたら、俺が近くに居てあげるから。」
俺は何も感じないから全然平気だし・・・。
「てぇ・・・」
「て?」
「手握っていてください!」
「は!?」
「ダメですか」
「ダメじゃないですっ!」
むしろ、良い!
じゃない!
ってなんか変態っぽい返事しちゃった。
まぁ、良し。
誰も居ないし。
グラーシュの差し出してきた手を握った。
見れば、グラーシュは真剣そのもの。
なんだかすいません、変なコーフンしちゃって。
「始めます。」
「どうぞ。」
・・・
グラーシュが小さく震えながら、自分の身の回りを見ていた。
次第にその震えは無くなり、落ち着き、微笑みに変わった。
もう大丈夫そうだ。
そっと手を離した。
「ルラン様の言う通りでした。取り乱してしまい、すみませんでした。」
「良いよ、良いよ・・・。で、微笑んでいたって感じ?」
「はい。ノームは見えて居るだけですが、ウンディーネは協力的なイメージが伝わってきています。」
「それが、属性“有”と、属性“加護”の違いかもね。」
でも、ただそれだけの違いってことは無いはず。
グラーシュは鑑定眼を使えるから見えているだけのこと。
そして、鑑定眼を持っていない人間なんてほとんどのはず。
この有と加護の具体的な差は、スキルや魔法や技術に良い影響を及ぼすんだろうけど・・・。
結局試してみないとわからないし。
「今夜はこの辺にして、寝よっか。」
「はい。」
「お疲れ様。お休みなさい。」
グラーシュはケイコの寝る部屋に入っていった。
ははは、添い寝の約束してたんだろうな。
・・・
無事にマイール山の一件は済んだ。
でも、宿題は、かなり残っている。
王都の中央市街地でグラーシュのブーツを作ってくれた鍛冶屋のボルカール探し。
王都の南の市街地でエラムを引き取り。
リーチ伯爵との交渉は、別にこちらから出向いてまで行う事じゃないな。
こっちに用はない。
本当にエラムが欲しければ、向こうから何としてもコンタクトを取ってくるだろうし・・・。
魔法学校も気になる。
ケイコの兄さんが通っているのはミーヴ侯爵領の魔法学校だと言ってたな。
グラーシュの全属性取得もあるし・・・。
やることだらけだ。
今日も色々あった。
しっかり休んでから決めよう。




