第3話 祠に向けて
「加護を受ける祠への案内と、一緒にお参りしてくれるエルフを手配して頂けますか?」
「あぁ、すいません。それでしたら・・・ケイコ!できるよね?」
「うん。」
「いや、ケイコは・・・」
「できるもん!」
「ルラン様、ケイコもエルフです。御心配には及びません。」
村長まで畳みかけてくるやん。
そうじゃないんだ・・・。
「多分なんですけど、ケイコはグラーシュに助けられたという印象が強くて、私への思いが薄れてしまっているような気がしまして・・・。」
村長を呼んできてから、ケイコはグラーシュにずーっとしがみついている。
それを見た村長も、俺の言う事を理解してくれたようだ。
「だから、もしよろしければ、私の方はケイコのおばあちゃんにお願いしたいんですよ。」
「そういうことでしたか・・・。ケイコのおばあちゃんなら、確か・・・加護を受けるためのお参りを経験してたはずですから、適任ですね。」
・・・
村長も一緒になってケイコの家に上がり込み、村長が直々におばあちゃんにお願いしてくれた。
「お安い御用です。」
おばあちゃんは快諾してくれた。
「それでは、私はここで失礼します。」
村長は、そう言うとスッと立って行ってしまった。
ここから、4集落を回るわけだ、大変だ。
リーチ伯爵を含め王都側が納得するように上手いことやって欲しい。
「助かります。ありがとうございます。」
俺はおばあさんに向き直してお礼を言った。
「ただ、私からもお願いがあるのですが、よろしいですか?」
「どうぞどうぞ。」
こちらはおばあさんのおかげで、これから水の属性の加護を頂けるんだから、何でもどんとこいだ。
「祠までの道中、薬草や山菜を採取したいんですよ。」
「ぜんっぜん、問題ないですよ。大丈夫です。」
「それと、留守番は・・・。」
「ご心配なく!アルディ!」
「御意。」
「ありがとうございます・・・。それじゃあ行きますかね?」
「すいません、一休みしてからでいいですか?」
「え?えぇ。」
「この集落に来る直前まで戦ってましたので、ケイコも今は興奮していて疲れを自覚してないでしょうけど・・・。」
「気が付きませんで、すいません・・・。それでは一休みしてからにしましょう。」
・・・
・・・・・
人も馬も、揃いも揃って昼寝した。
起きて、準備をしながら、“こういう平穏が幸せって事なんだろう”と、しみじみ思った。
このところ殺伐としていた。
転生してまで、1分1秒を争うような現世のような生き方はしたくない。
まったり、この世界を楽しみたいもんだ。
「しゅっぱーつ!」
おばあちゃんとグラーシュと手をつないだケイコの掛け声で、祠に向けて出発した。
道中は、おばあちゃんとケイコとグラーシュの薬草・山菜の採取競争だった。
ほっこりしてて、見ているこっちも癒された。
そうそう、こういう“まったり”がサイコーなんだ。




