第1話 凱旋
ケイコの集落に到着した。
入口の衛兵は、グラーシュに警戒していた。
俺が仲間だと紹介して、仲間であることは分かってくれたようだが、警戒を解いてくれない。
露出が多く、目立つ武器を持たない美人は冒険者に見えないようで、どのように評価したらよいか分からないみたいだ。
しかし、これに対し、ケイコが黙ってはいなかった。
“だいすきなおねぇちゃん”に向けられた不信感で、怒り心頭の御様子だ。
ひたすら「助けてくれたグラーシュおねぇちゃん」を連呼。
そのおかげで、衛兵も折れてくれた。
幼子のわがままってだけじゃない、ケイコのこの集落での信頼のなせる業なのだろう。
集落に入ると、ストークから飛び降りて、ケイコは家に走っていった。
ケイコの後姿を見て、ふと思った。
なんでケイコはこんなにグラーシュに懐いているんだ?
「グラーシュ、ケイコと何があったの?どうして魔法が使えるようになったの?」
「え?ケイコ、魔法使えなかったんですか?」
「知らなかったの?」
「知りませんでした。」
「俺がアルディと合流するために出発した後、何かした?」
「特別なことは何も・・・。」
おかしい・・・。
時間が解決したのか?
そういうこともあるだろうけど・・・それではグラーシュに懐く理由にならない。
なんだ?
とりあえず、追いかけてケイコの家に着いた。
「ただいまー。」
「お帰り~。」
ケイコとおばあちゃんの熱い抱擁。
おばあちゃんは涙を浮かべて喜んでいる。
「大活躍だったの!」
「そうかいそうかい。」
祖母と孫の再開の邪魔できないから、一旦離れて待つことにした。
少し経つとケイコが出て来て、グラーシュに飛びついた。
胸に顔をうずめている。
くーっ、羨ましい!子供の特権か・・・。
「おばあちゃんが、お茶でもどうぞって」
満面の笑みでこちらに向けて、お茶に呼んでくれた。
そして、また顔をうずめている。
・・・
あ!・・・
それか!?
「グラーシュ、城門への攻撃前にケイコと何かした?」
「え?・・・攻撃前ですか?」
「今みたいに、ケイコを抱きしめてあげたとか。」
「はい、直前まで震えていたので、抱きしめてあげました。」
「そうですか・・・」
「何か・・・まずかったですか?」
「いや、グラーシュは良い事をしました。」
「良かったぁ。」
攻撃前にグラーシュに抱きしめて貰えるなら、なんぼでも攻撃・・・
じゃない!
何がきっかけで怖い事を克服できるか・・・。
何がきっかけで前を向けるか・・・
人によって人それぞれだけど、ケイコは、グラーシュの“大きな胸でギュー”がスイッチだったのだろう。
今も人目を気にせず、満喫しているもんな~。
「ケイコ、それ、良い?」
「イイッ!!」
ははは、素直で宜しい。
俺も次凹んだら、グラーシュにお願いしようかな。




