第20話 グラーシュの活躍
ケイコのピンチと分かってスイッチが入ったのか、グラーシュが、鬼のように強い。
まじで、ゴブリンはおろか、オーガのだろうと、お構い無しで、ちぎっては投げちぎっては投げ。
ゴブリンがグラーシュの蹴りを両手で防ごうものなら、一撃で両方ともへし折って、ぷら~んってなってるし・・・。
そもそも、間合いの獲り方が絶妙だから、回避しているつもりのゴブリンも、被弾して弾け飛んでいる。
打撃がミートした瞬間に、爆ぜているのもいる。
オーガと組み合っても、そのままねじ伏せるし・・・まじでドン引きのレベル。
もうメチャクチャだ。
容姿端麗のスーパーモデルが、ゴブリンとオーガを赤子の手をひねる様に扱う光景が、目の前に広がる・・・。
見ているこっちは、自分の中にある既成観念と視覚情報のギャップに、頭がバグってくる。
ゴブリンもオーガも、大変だな。
だんだんと、可哀想になって来たわ。
唯一のメリットは・・・。
グラーシュに蹴って貰えると“見える”んだけど、その直後に蹴り飛ばされて、あの世に不時着だ。
もしかすると“見えた”って自覚する前に、最高に気持ちよく昇天してるかもしれない。
グラーシュと喧嘩するのは絶対にやめよう。
仲良くしてても十分“見える”・・・じゃない!
結局、グラーシュが全てを終えたとき、息一つ上げていないし、指環を使うことも無かった。
多分、困っていないのだろう。
このグラーシュの強さからすると、城門の破壊も指輪無しで全然平気だったかもしれない。
でも、城内での戦いを考慮して、城門だけは指輪を使ったんだろうな~。
ヤバいな。
ラゴイルが、護衛にグラーシュを付けていたのも分かるわ。
俺が守る必要なさそうだもんな。
「お疲れ様~。」
「ルラン様・・・お疲れ様です。」
ここからが本番って感じで、グラーシュは“余熱”が抜けてない様子だ。
ちょっとクールダウンしててね。
「ケイコもお疲れ様。」
「うん。」
「魔法使えたね。」
「うん。」
「良かったね。」
「うん。」
「これで特待生、間違い無しだね。」
「・・・」
「どうしたの?」
「だって、ここでの活躍は誰も見てないじゃん。」
「俺が見てるじゃん。」
「誰がルランの話聞くの?。」
ガーン!
そうだった。
攻めて他の中立な立場のエルフとか居てくれればよかった。
「ってことは、女性保護の実績2件で上手く立ち回るしかないね。」
「うん。」
「きっとうまくいくよ。」
「うん。」
“投獄完了しました。”
タイミング良くアルディからの思念が飛んできた。
「無事に5拠点の掃討完了―っ!!」
「やったー!」
ケイコも大喜びだ。
「みんなお疲れさまでした~。」
「お疲れさまでした。」
気が付くと、すっかり、いつもの笑顔が素敵なグラーシュに戻っていた。
良かった~。
「さて、ケイコ、集落まで送るよ。」
「ありがとー!」
そう言うとケイコはストークに跨った。
「え?」
俺とじゃないの?
いや、少女に興味があるわけじゃないんだけど、ここまでずっと俺と一緒にラムーに跨っていたから、てっきりラムーに乗ると思っていたのに。
「おねぇちゃんと行く!」
おねぇちゃん?
年下の兄弟がツボな一人っ子のグラーシュと、妹で末っ子の少女ケイコ・・・
そうか、うまい事バランスするんだな。
でも、これはこれでOKだ。
グラーシュがエルフの少女ケイコを助けた。
見て分かり易い証拠として、ケイコが慕っているってなるからね。
「りょーかい。それじゃあ、シュッパーツ!」




