第19話 嬉しい誤算
“アルディ、後で調査するかもしれないから、ゴブリンとオーガ1匹ずつ生け捕りして!”
アルディは、今までの一刀両断スタイルから、峰打ちスタイルに替えた。
それでも、加減が難しいようで、一刀両断している。
峰打ちになってないじゃん。
峰に替えただけで、切っとるやんけ。
かなりの犠牲を払ったが、次第に、アルディはコツを掴んだみたいで無事に一匹ずつ失神させることに成功した。
エレナは一心不乱に屠りまくって、北側を全滅させたようだ。
“使えそうな牢屋を探して!”
“分かりました。”
こちらも無事に終わった。
アルディに、エレナと合流した上で、生け捕りゴブリンとオーガを個別の牢に入れるように指示を出した。
俺は急いでグラーシュとケイコのもとへラムーを走らせた。
行く先から音が聞こえてくる。
バシュ!
バシュ!
音がする度に、ゴブリンが倒れていくのが見えた。
ん?
え!
ケイコ、魔法、使ってるやん!!
「ガストジャベリン!」
ケイコが叫ぶ度に、風圧でゴブリンの動きが止まる。
そこに風の槍が飛んでいく。
風圧が突然緩み、支えを失ったゴブリンの体が不用意に前に進む。
そこに風の槍が突き刺さる。
何だ、この魔法は!
先行する風圧で吹き飛ばせれば、吹き飛ばされて防御できない対象に風の槍が刺さる・・・。
抵抗できる者は、自分の抵抗していた力が加わった風の槍の貫通力の餌食になる・・・。
エグイ!
この魔法を使うケイコが挙手すれば、少女と言えどゴブリンとオーガの掃討に参加許可が出るのも、分からないでもない。
思考せずに突進するだけの土属性のゴブリンやオーガが相手なら、こんなに効果的な魔法も無いだろう。
ただ、抵抗する生き物を確実に貫通する魔法だが、急所を確実に狙うという感じではない。
中には打ち損じが出てくる。
でも、そこは馬から降りて本気モードのグラーシュがカバーしている。
ナイスコンビネーション!
ストークは・・・上手に気配を消しながら戦闘を回避して逃げ回っている。
鬼ごっこでもやっているつもりなのか。
余り緊張感が無いように見える。
まぁ、無事ならそれで良し。
とにかく、ケイコのトラウマ体験克服と、グラーシュのエルフを助けた実績を固めるために、隠れてこっそり見守ることにした。
しかし、次第にケイコの魔法の頻度が下がってきた。
もしかして、ケイコ、意外と数を打てないんじゃないのか?
この魔法がコモンな訳がない。
多分この魔法の魔導書は、無印銀縁だな。
え?
ケイコそんな高級品を読んだの?・・・。
じゃない!
助けに行かないと・・・。
ダメだ!
グラーシュに“エルフを助けた実績”が必要なんだった。
あーっ。
・・・
しかし、俺の葛藤は無駄に終わった。




