第14話 独身男の鑑
通された家の中に入ると驚いた。
清掃が行き届いて、実にきれいだった。
俺の1人暮らしで、一度たりともこんなにきれいだったことは無い。
部屋の汚い俺が転生できたのだから、ここの住人だったエルフも転生していればいいなぁ。
「ルラン、凄いよ。ちょっと来て!」
「おいおい、泊めさせて貰うだけって話で、室内を物色して良いなんて言われてないぞ!」
「いいからいいから。」
「はぁ、わかった。行くよ。」
・・・
ケイコに呼ばれた先は書斎だった。
「こ・・・これは?」
魔導書の類が壁一面にびっしりだ。
キレイに整頓されている。
全ての属性が揃っているし、まるで魔導書の図書館か?
「凄い・・・。」
これをすべて習得していたら、亡くなってしまうことは無かったのかもしれない。
「でしょー?」
いや、ケイコが凄いわけではないのに・・・。
なんだろう、エルフである事を自慢しているのかな?
俺を人間扱いしてくれているのはありがたいけど、俺人間じゃないらしいんだよね。
「この聖地を守るエルフは、水属性しか使えないんじゃなかったっけ?」
「はぁ?エルフが水属性しか使えないわけないでしょ?」
「どういう事?」
「この地に居るから水の精霊の協力を得やすいの。だから、水属性の魔法が強く使えるの。別の他の属性も使えるし。」
「そういうことか。ケイコはどんな属性を使うの?」
「水と風と火属性を持ってる。」
「3つも?凄いじゃん!」
「エルフにとっては、普通だよ。」
「ははは・・・そっか。」
そうなのか・・・何も持っていないなんて言ったら軽蔑されるんじゃないか・・・。
・・・
「困ったなぁ。」
「どうしたの?」
「ここにある本を読んでみたいなぁ・・・。」
もしかすると、ここにある本の中に、属性の無い男を救う“聖書”がありそうなのに・・・。
「物色はダメだもんねー?」
「そう・・・。でも、まぁいっか。」
「いいの?」
「こういう魔導書が存在するって事は分かったから、それだけでも有難いよ。」
旅を続けていれば、いずれは好きなだけ読み漁れる機会も来るだろうさ。
「ふーん。」
「用意されている食料を頂いて、さっさと寝よう。明日も早いよ。」
「はーい。」
・・・
・・・・・
朝を迎えた。
今日が最終日になる・・・はず。
気が付けば、おじいさんと先生に合わないのが2日となった。
転生してからこっち、出会ってからは毎晩毎晩会っていたから、かなりの寂しさを覚える。
身支度を済ませて玄関に行くと、すでにエレナは準備を済ませ、2頭の黒馬の世話も済ませていた。
ナイス、エレナ!
「おはよー」
ケイコも起きてきた。
「よく寝れた?」
「うん・・・」
「今日でラストだと思う。一日よろしくね」
「うん・・・」
ケイコ・・・寝れてないな。
どうせ、“明日、何が何でも成果を上げるんだ!”と自分で自分にプレッシャーをかけて・・・。
フラグになるから、これ以上は考えないでおこう。




