第9話 拠点の中
俺の召喚で強化されて、見紛うこと無き“万夫不当”となった2人の猛将が無傷で、入り口でもないところから拠点内へ突入し、大混乱のゴブリンとオーガを襲う。
ゴブリンやオーガの鎧や兜は全く意味をなさず、一刀の下に両断されていく。
偵察用の光の粒子から送られてくる映像は、一方的な掃討戦そのものだった。
・・・
・・・・・
「ねぇ・・・」
ケイコが口を開いた。
「何?」
「静かになっちゃったような気がするんだけど・・・もしかして、もう終わったの?」
既に二人からの思念で掃討完了という報告を受けていたが、ケイコに不審がられないように黙っていたが、流石に気付かれたか?
大混乱を生じているゴブリンとオーガの悲鳴や雄叫びが全く聞こえなくなったのだから、隠しようがないけど、ケイコには見えてない訳だから・・・。
「ん-、どうかな。見に行ってみるかい?」
ネロアとオルフは居ないから、ケイコと2人で、てくてく歩いて行った。
近づくにつれて、ケイコの顔が青ざめいった。
拠点に入った時には、勝利への核心よりも、1,000体ものゴブリンとオーガの死体にドン引きしている。
ケイコにとっては、覚悟も不十分のまま作戦開始したし、一度に見る量じゃないもんね。
“地下スペースに生存者有り!”
アルディから思念が飛んできた。
ケイコと2人で急いで向かった。
巨大な鉄檻の中に、女性たちが居た。
しかし、全員、外傷を負っていて、ゴブリンに襲われた後のようだった。
窮地と見るや、子孫を残そうとしたか・・・。
本能に純粋というべきか・・・理性の欠片も無いのか!というべきなのか。
単に開放しても、無事に人里までたどり着けるか分からない・・・。
「ケイコ、ここから一番近いエルフの里まで、どのくらい?」
「5kmくらい離れたところにある。」
「5kmか・・・」
「よし、急遽予定変更。エルフの里まで連れてって、保護してもらうよ。」
「えー!」
「拠点は落としたんだ。ここを奪還するために移住してくるなら、この女性達への対応は、遅かれ早かれ必要になるんだし、放っておけないし。」
「そりゃあ、そうだけど。」
「ケイコ、集落に着いたら、説得、お願いね。」
「できるかな~。」
「実績になるんじゃない?“ゴブリンに拉致監禁されていた人間の女性を、エルフの里で保護するように尽力した“って。特待生いけるでしょ。」
「ルランって・・・」
「なんだよ。」
「なんでもない!やってみるよ。」
「そう来なくっちゃ。!」
保護女性達の体を隠すのに使えそうな布を見つけて、身にまとわせた。
身も心も傷付き、疲労困憊している女性達に、5kmの道のりを歩かせることは、心苦しくてできない。
急遽、光の粒子で馬車を成形し、ネロアとオルフに引かせた。
「ケイコ、行くよ!」
ふと見ると、ケイトは唖然としていた。
「ルラン・・・、転移魔法が使えるんだね。しかも、こんなデカい物を出せるなんて、どうなってるの?」
俺の声に我に返ったはずのケイコだったが、意味の分からないことを言っていた。
転移魔法で物を出す?
どういうことだ?