第8話 1つ目の奪還開始
「どうするもこうするも、ここからひたすら狙撃だよ。」
「狙撃?ここから?」
「そう」
「え!?見えるの、敵?」
「見えるよ。」
「凄いんだね、あんた。」
「ここから狙撃して出来るだけゴブリンとオーガを減らした後に、拠点に入って一掃しようかなって。」
「そう・・・なんだ・・・。」
急に、ケイコの気の抜けた返事が返って来て、拍子が狂いそうになった。
「なんだよ。」
「いやここから凄い魔法で、ドッカーンってさ・・・期待してたのに。」
悪かったな、魔法使えなくて、ってか・・・
「分かってないなぁ。地味な仕事が大切なのよ。」
しょうも無いマウントを取って、話を終えた。
まずは、狙撃対象の確認。
光の粒子で確認できたのは、900匹近いゴブリンと100匹近いオーガと・・・子爵部隊の残骸だ。
地下までサーチすると、子爵部隊が連れ込んだ女性たちが襲われていた。
最悪だ。
吐き気がする。
落ち着け・・・。
ここからマッハ9で射撃すると、衝撃波で狙撃されている事に気が付かれてしまう。
気付かれたら建物に隠れられてしまう。
日が落ち切ってから闇に乗じて撃てばいいのか?
その場合、お手製の自慢のライフルスコープで、闇の中のターゲットが見えるかがネックになる。
かといって亜音速弾での狙撃では、落下と風の抵抗を受けてしまう。
それに、偵察したところ、相手の長距離攻撃の手段が弓矢だけだから、射程はいいところ100mだろう。
300mくらいのところまで接近して亜音速弾で射撃するか。
それと同時に、アルディとエレナに攻め込んでもらう。
エレナに任せれば、どこからでも突入できるから、容易に落とせそうだ。
「ケイコ、集落から300mくらいのところに、ここと同じように見晴らしのいい丘ある?」
「あるけど、集落の全体は見渡せないよ。」
「イイよ。そこに移動しよう。」
・・・
・・・・・
「着いたよ。どう?見える?」
なるほど、確かに丘が低いせいで、集落の全体は見渡せない。
でもまぁ、そこそこ見えるから、やってみますか。
「アルディ、エレナ、静かに接近して。俺の射撃に気付いて拠点内が動揺し始めたら、突入して殲滅ね。」
「「御意。」」
「私は?」
「ここで俺と待機」
「えーっ!」
そうか、ケイコはケイコで実績が必要だったよね。
「ここは1つ目だから、俺たちの攻め方をよく見て、次の拠点以降の攻略で、自分の出来そうなことを見つけてくれるかい?」
「はーい。」
「それでは作戦開始!」
アルディとエレナが颯爽と拠点に向けて走っていった。
2人からの思念で拠点まで100m地点到着の連絡が入った。
薄暗いためか、まだ二人は見張りにバレていない。
「ケイコ、始めるよ。心の準備はいい?」
「うん。」
・・・
スコープを覗き、単独行動中のゴブリンを見つけ次第、射線と距離と落下で自動修正して・・・ヘッドショット!
地道な作業をひたすら続ける。
子爵部隊から装備を奪って兜を装備している者や、鎧を装備している者もいる。
声を上げられると臨戦態勢が整ってしまうので、兜や鎧の隙間と、喉や口を狙って、狙撃!
100匹くらい倒したところで、拠点内に動揺が広がり始めた。
こちらに気が付いてたようだが、100m以上離れた場所からの攻撃を想像していないのか、一向にこちらを警戒している様子はない。
更に100匹射殺。
城内は大混乱だ。
ヨシ!
“突撃!”
“”御意!“”