第4話 掃討・奪還の参加理由
「先ほど申しあげたとおり、この山は、聖地です。われらエルフは守らねばなりません。」
そうだとしたら、ケイコだけじゃなくて、お兄さんも参加してもおかしくない様な・・・。
「もしかして、他にも理由が?」
「・・・」
「話したくないなら、別にいいですよ。」
「いえ、隠すような話でもありません。ケイコも魔法学校に行きたがっているんです。ですが、2人分の学費はありません。」
「結構、大変なんですか?」
「はい。授業料に生活費となるとかなりの負担で・・・。」
「奨学金とかは?」
「卒業後に返済が伴いますから・・・。そこで、ケイコは兄に相談したところ、特待生の話を聞いたようです。」
「おぉ!」
「特待生になるためには色々な方法があるようです。例えば、ギルドでの実績や、政府系の仕事での功績など・・・。」
「それで・・・。」
「はい。今回の王都側との挟撃作戦の話が出て、村で参加者を募ったときに、本来なら、うちからはケイコの兄が帰省して参加する予定でした。」
「え?」
「ところが、魔法に自信のあるケイコは、兄を説得し自分が参加するように手配してしまったのです。」
ケイコ・・・魔法に自信があるんだ。
助けた時はガス欠・・・じゃなくてマナが枯渇していたのかな。
って、勝手に参加手配はないだろ、ケイコ・・・怖いくらい行動力あるなぁ。
「私が知ったのは、出発の前日でした。部隊編成の中にケイコの名前を見つけてビックリしました。ですが今回の一件で、特待生は難しいでしょうね。」
ケイコは顔を伏せて話を聞いていた。
「まぁ、でも、またチャンスは巡ってきますよ!」
前世でよく言われたこのフレーズを、転生して言う側に回るとは。
言われたときは、何を言ってるんだ!って素直に聞き入れないもんなんだけどさ。
あとから振り返ってみると、形は違えど、チャンスは案外巡ってくる。
落ち込んで何もしないと、せっかく巡って来たチャンスを逃すことになるから、程よく反省して、気持ちを切り替えるのがとても大切・・・。
って前世で仕事してて学んだ。
ケイコは若いから、サクッと立ち直って貰いたいものだが。
「最後にもう一つ質問してもいいですか?」
「どうぞどうぞ。」
「ここが水の精霊の聖地なら、水属性の修得はできますか?」
「水属性に興味があるんですか?」
「はい!」
「面白い人ですね。」
「どうしてです?」
「水属性は、あまり攻撃に向いていませんので、水属性に興味を持つ方は少ないんですよ。」
「え?」
「一番興味を持っていらっしゃるのは、農業ギルドの方ですね。次いで工業ギルドの方ですかねぇ。」
「そうなんですか。」
「同じエルフが守る北のルーロック山は、風属性なので、一般ギルドの方や冒険者の方に人気なんですけどね・・・。」
「あのぉ、・・・で、水属性の修得は、できるんですかねぇ?」
「あ、すいません・・・勿論、できますよ。」
「私ともう1人・・・今はちょっと王都まで御遣いに行っているんですが、女の子なんですけど。」
「何人でもどんな方でも、大丈夫ですよ。」
「それで・・・どんなことをすれば水属性の修得ができるんですか?」
「簡単なことです。この聖地にある祠にお参りするだけです。」
「え?・・・それだけですか?」
「はい。水属性の修得それ自体は大したことではありませんので。」
おいおい、その大したことないことが俺は出来ていないってのか・・・泣けてくるわ。
「ただ、ルラン様は・・・加護を受けた方が良いんじゃないですかねぇ。」
「加護?」
「そうです。単に水属性を修得するのではなく、水属性の加護を受けるという事です。」
なんだか良さげだ。
「水属性“修得”ではなく、水属性“加護”になるには、どんなことをしたらいいんですか?」
「この聖地を守るエルフを助け、この地の祠で加護を受けるだけです。」
「ということは・・・。」
「はい。ルラン様は、この地を守るエルフであるケイコが助けられ、それをこの村のエルフは知っていますので、間違いなく1つ目をクリアしてます。」
「あとは、祠で加護を受けるだけ!・・・ん?祠で加護を受けるってのは、どんなことすればいいんですか?」
「大したことではありませんよ。」
それか・・・仕事してて嫌って程、聞かされたフレーズだ。
大したことかどうかはこちらが決めたいんだよね~。
経験者に聞くと、だいたいのことが、「大したことじゃない」から始まるんだよ。
でも、やってみると、すげぇ大変なことばかりなんだよね。
まぁ、悪気が有って言ってることじゃないから怒るに怒れないんだけどさ。
「具体的にはどんなことですか?」