第1話 エルフの少女救出
エラムが居なくなった俺は、アルディに捕まってネロアに乗るか・・・エレナに捕まってオルフに乗るか・・・。
もちろん、エレナ。
じゃなくて、オルフに乗った。
行き先は、拠点の裏側で奮闘するエルフのところだ。
最悪の事態になってしまったせいで、周囲に誰も居ない。
アルディとエレナが無言で完全な連携を見せても、誰からも不審がられない。
それに、一刻を争う。
しゃべっている暇などない。
3人で思念の飛ばし合い、つまりテレパシーでコミュニケーションを取りながら進むことにした。
・・・
拠点が見えてきた。
こちらに気が付いたゴブリンたちが、複数の矢を放つ。
雨のように降り注ぐ弓を、叩き落とし、躱し、疾走する。
拠点を迂回して裏に回ったのでは、手遅れになるかもしれない。
偵察先の粒子からは、既に、エルフは男性1人と少女1人になってしまった様子が届いている。
大体からして、なんで、こんなところに少女が居るんだ。
“ルラン様、拠点を突破して、裏に出ます!”
え?
エレナは何を言ってるの?
でも・・・
“アルディ、私の後ろに付きなさい!”
“・・・”
エレナがどんどん加速する。
たまらず、エレナにしがみつく。
アルディも離れずに
徐々に周囲が暗くなっていく。
いや、違う。
俺らを闇の粒子の膜が包んで球体になっているようだ。
偵察用に周囲に散開している光の粒子から、自分たちを映し出した映像が届き、状況が理解できた。
もう矢の嵐を回避も打ち払いも不要。
ただただ、要塞溶と化した拠点の壁に向かって全力で走っていく。
今の俺は、石壁に向かって突進しているだけだ。
激突のイメージしかわかない。
絶叫マシンに乗っても声が出なくなる俺は、当然無言。
安全装置なんてものが無い絶叫マシンに乗っているようだ。
絶叫マシンで絶叫しないから過剰なストレスが心臓に集中して苦しくなるって聞いたことがあるけど、これは絶叫マシンじゃない。
失神しそうだ。
・・・
そして、突っ込んだ!!
が、なんの衝突の感触も無く、石壁を抜けてしまった。
同時に、自分の内に、壁の材料となっていた石の材料がストックされていくのが分かった。
おぉっ!!
こういう使い方があるのか!!
でも、これ・・・エレナの生前の二つ名を強化するような最適な闇の粒子の使い方だな。
城攻めや拠点攻略は、如何に城門を突破するかが問題になるけど、この方法なら、城門の攻略なんて関係ない。
攻撃側の都合のいい場所に、突入口を作れるのだから、対象が城だろうが拠点だろうが、問答無用じゃん。
しかも、音もたてず衝撃も与えず突破口を作り、こちらの突入の勢いは落ちない。
ぶっ壊れスキルだな。
なんの抵抗も無く、拠点の裏側まで、通り抜けた。
ナイス、エレナ!
山の奥に向かって逃げるエルフの少女と、それを追うゴブリンの姿が見えた。
「アルディー!」
「御意!」
一気に、オルフを追い抜いたネロアが、エルフの少女に駆け寄った。
少女に手を伸ばすアルディ。
少女のわきの下にアルディの手が入ったと思った瞬間、掬い上げてアルディの前に乗った。
逃がすまいと追いすがるゴブリンの群れ。
エレナの後ろから、群がるゴブリンに向けてハンドガンを乱射。
先に惨状を見ていたおかげで、あれだけ攻撃に抵抗のあった俺が、まったく躊躇せずにゴブリンに向けて引き金を引いている。
このハンドガンは、球が無限だし、反動も無いから、扱いやすい。
撃ち漏らしは、エレナの振り回すハルバードに切り捨てられていく。
「アルディ、マイール山頂上に向けて、全速前進!エレナも続け!」
「「御意。」」