第20話 考え抜いての一択
「まず、敵の数が多過ぎる。当初見込んでいたよりもはるかに多い。」
「・・・」
「だから、撤退することになると思う。」
「・・・」
「ここにも追撃が来る。グラーシュはストークに乗って、リーチ伯爵をエラムに乗せて、“南の英傑“まで逃げて。」
「・・・」
「これからリーチ伯爵を説得に行くけど、もし、リーチ伯爵がグラーシュのいう事を信じなかったら、それはもう仕方ない。」
「え?」
「リーチ伯爵の事は諦めて、グラーシュだけ逃げて。」
「はい・・・。でも、ルラン様は?」
「俺とアルディとエレナで、逃げ遅れているエルフを助けに行く。」
「え?私もついていきます!」
「ダメ!」
「何故です?」
「敵の数が多過ぎるから!」
拠点ごと吹き飛ばしていいって言うなら、簡単なんだけど。
まだ、偵察不足で生き残っている集落の住民もいるかもしれない・・・。
エルフは奪還を希望した・・・それには理由があるかもしれない・・・。
そう考えると、丸ごとドッカーンは、できない。
すると、各個撃破になる。
1,000匹も各個撃破していたら、グラーシュに危険が及ぶ可能性が高い・・・。
くそ、頭の中が混乱する。
ゴブリンもオーガもこの世界の一部であり、自分よりも力の無いものを襲って生き残る正義ってのがあるのかもしれない。
襲われた集落で、助からなかった住民は、今となってはどうにもならないし・・・。
子爵の愚かな考えに追従した女性達にも、非は有るのかもしれない。
ただ、人間に助けを求めて、人間を信じて挟撃に参加したエルフが、諦めて撤退しようとしているのに、捕まるのを見過ごすことは俺にはできない。
どうして人間に助けを求めたのか、なぜ人間を信じたのか・・・どうしても知りたい。
だからこその、エルフ救出で一点突破だ!
「分かりました・・・。」
グラーシュが力の無い返事をした。
「大丈夫。グラーシュも!俺も!」
「・・・」
「それに、すぐ会えるよ。」
「本当に?」
「本当に!!」
・・・
グラーシュと作戦本部を覗いてみた。
隣の拠点を攻撃していた伯爵が、リーチ伯爵の前に倒れていた。
背中には矢が刺さっている。
リーチ伯爵に合えたところで、こと切れてしまったのだろう。
「リーチ伯爵!ことは急を要します。今すぐ撤退してください。」
もう、状況は分かっているでしょ?
説明を飛ばして、要件を伝えた。
「馬が・・・」
馬車なんかで来ているからそう言う事になるんだ・・・なんて言えない。
「私のをご利用ください。伯爵の護衛にはグラーシュが付きます。」
「君は?」
「私は、ここで食い止めますので、その隙に。」
嘘ですけど。
「わかった・・・。撤退だ。」
グラーシュに連れられてリーチ伯爵は王都に向けて出発した。
他の生き残った者も馬で後を追っていった。
「よし。アルディ、エレナ、行くよ。」
「「御意。」」
いつもお読みいただきありがとうございます。
お陰様で、150話です。
今後もマイペースに頑張ってまいりますので、気楽にお楽しみいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。