第19話 惨劇の実態
作戦本部から少し離れたところで、飯の支度やら雑務をこなしていると、次々に負傷兵がやって来た。
重傷、重体な者が多い。
しかし、毒に侵されている者がほとんどだから、助からないだろう。
第1部隊は、リーチ伯爵が選んだ精鋭の集まりと聞いていたから、始まってみれば、士気が徐々に高まって、すんなり相当・奪還を済ませると期待していたのに。
同じように、期待していた“秘策”は・・・なかったという事か。
気になって作戦本部を覗いてみたら、酷い結果が集計された後だった。
第1部隊だけで、死者50名、負傷者100名以上・・・。
はっきり言って、第1部隊はほぼ壊滅だ。
ゴブリンとオーガが想定の倍だったとして、こんなに一方的な惨劇になるんだろうか・・・。
こうなると後方支援どころの話ではない。
立場を気にしている場合でもないだろう。
「ゴブリンやオーガは、追撃していそうですか?」
思い切って、リーチ伯爵に質問してみた。
「今のところ、その兆候は無いが、こちらからの攻撃が無いとわかれば・・・、分からない。」
ここに攻めてこられたら、本当に全滅するんじゃないのか・・・。
「エルフ側の援軍は?」
「くっ!」
「無かったんですか?」
「あったにはあったが、10人位の魔法使いが来ただけだ!」
魔法を使うエルフ10人って少ないのかな?
なんかすごく、強そうな気がするけど。
なんか、思ってたんと違う・・・。
何かがおかしい。
「失礼します。」
リーチ伯爵に一礼して、作戦本部を出て、自分のテントに戻った。
「ちょっと、様子がおかしい。」
「どんなふうにですか?」
グラーシュが不思議そうにこちらを見てきた。
「それがよく分からないから、今から戦地を偵察してみる。」
第1部隊の攻略対象の拠点に向けて、偵察用の光の粒子を飛ばしてみた。
は!?
どこがゴブリンとオーガ200匹だ・・・。
どう見ても1,000は居るじゃないか。
斥候は何を見てきた?
拠点の中は・・・おびただしい数のエルフと人の死体の山だ。
酷い・・・。
いや、酷いなんてもんじゃない。
突然の吐き気を抑えられずに、3人の前で吐いてしまった。
「ごめん、グラーシュ。」
「何があったんですか?」
「ちょっと待ってて。」
他の攻略対象はどうなってる?
俺らの左隣の伯爵の部隊・・・全滅。
右隣の伯爵の部隊・・・生存者は伯爵と2名だけ、こちらに向かっていて、もうすぐ到着するが、追手のおまけつきだ。
子爵の部隊は・・・最左翼も最右翼もほぼ全滅。
だけじゃない!
連れて来ていた女性たちで生き残っている者は、そのまま拉致されて・・・。
「最悪だ。」
エルフ側の援軍は、ほぼ撤退している。
が、俺らの攻撃対象に援軍に来た部隊は、まだ撤退が完了していない!
エルフ側からすると、ここが援軍先で一番奥だからか。
ヤバい。
エルフの男性4名と少女1名が、撤退の為に奮闘中だ。
「グラーシュ、よく聞いて。」