第14話 オートガードの強度試験
俺が見張り中に男が訪ねてきたこと、会話の内容から今後グラーシュが狙われる可能性が高いことを、グラーシュに伝えた。
そして、もちろん、それが魔物ではなく特別掃討奪還連隊のメンバーから、報酬の受け取りまで及ぶことも隠さずに伝えた。
少しでも無事に報酬を受け取るために、グラーシュ自体も相手を理解しておく必要があるからだ。
驚いたことにグラーシュはさほど動揺しなかった。
レーゼン侯爵の城で醜い駆け引きを目の当たりにしただけではなく、巻き込まれた経験があったからだろう。
指輪をプレゼントする理由も素直に受け止めくれた。
「説明がへたくそで、ごめんね。」
「大丈夫です。指輪を頂いたことに変わりありませんから。」
グラーシュは満面の笑みを返してくれた。
ん-、何か違うような・・・。
発言はおかしくないから、訂正も指摘もしようがない・・・語弊があるような気もするが。
「それじゃあ、今のうちに指輪の効果を確認しに行こうか。」
「はい!」
説明下手が炸裂して、ずいぶん長い間グラーシュに説明していたような気がしていたが、外はまだ暗かった。
見張りをしていたエレナに声をかけて、俺はグラーシュと2人で第1部隊の後方の森に移動した。
「さて、まずはグラーシュの正面から石を投げるね。」
「はい。」
アルディほどの剛速球は投げれないが、石だから当たり所が悪ければ致命傷だ。
「いくよ~。」
「はーい。」
シューッ!
お、意外と俺の投石も音を立てるやん。
そして、グラーシュの前方3m位のところに、光の積層障壁が展開した。
パーン!
乾いた音共に、俺の投げた球が弾かれた。
「すごいですね。これ。ビクともしませんよ。」
ははは、一枚目も砕けなかったことに俺は凹んだけどね。
グラーシュが満足してくれたならいいや。
ただ、こうなると俺もちょっと試したくなるよね。
「なんとなく分かったよね?」
「はい。」
「それじゃあ、ちょっと強度テストするよ。」
「はい!」
次は、俺の仕込み杖だ。
構えて、木製の弾丸を、とりあえず“亜音速”で発射してみる。
こんな20mそこそこで、グラーシュの胴体を狙って、もし万が一なんてことがあったら大変だ。
おじいさんの「最強じゃ!」を信じていないわけではないけど・・・。
念のため、ね。
狙いはグラーシュの左肩の上。
グラーシュの奥に立つの木の幹だ。
多分この場合はおじいさんが危険ではないことを見抜いて発動しないだろうから、俺の方で発動させることにした。
「動かないでねー。」
「はーい。」
発射!
パーンッ!
弾かれる音だけが響いた。
弾丸は上空に消えていった。
見ると積層構造の2枚目までは割ることができたが、とても最後の一枚には届かない。
しかも見る見るうちに、元の積層構造に戻っていく。
これだけ強いとカムフラージュになってないんじゃないか?
カムフラージュを重視するなら、どんなのときも1枚目は割れる演出でいいかもしれない。
「大丈夫でしたー。」
グラーシュの安堵の声で我に返った。
「りょーかーい。そしたら最後のテストやるよー。」
そう言ってグラーシュに駆け寄った。
「最後のテストって何ですか。」