第13話 オートガード謹呈
「グラーシュ、起きて!」
「ルラン様?・・・どうされたんですか?」
「プレゼントって、何が良い?」
「え?・・・急にどうしたんですか?」
「あのさぁ、どんなプレゼントだったら、いつも付けてくれる?」
「指輪!」
「え?」
ちょ、寝ぼけてたんじゃなかったんかい!
速答やんけ。
「腕輪とか、ネックレスとか色々あるじゃんね・・・」
「指輪です!」
・・・・
「刻印というか、タトゥというかは?傷みたいになるから嫌だよね?」
「傷!?・・・」
ん?なんか、グラーシュの様子が変だぞ。
「ルラン様に傷をつけられる・・・」
グラーシュ・・・紅潮してませんか!?
これはこれで話がこじれそうだ。
「指輪でいいね。指輪にするよ。」
「え?」
「どの指が良いの?」
「ここにしてください。」
思いっきり左の薬指を、示している。
「えーっと、どこの指かな?」
「ここです!」
はぁ。
そこの指を指定した女性に振り回された過去がフラッシュバックしてきた。
違う。
グラーシュはグラーシュ、過去とは違う。
それに、プレゼントして、グラーシュがちゃんとつけていれば、変な虫も寄りつかなくなるから良いかもしれない。
「分かった。それじゃ、手を出して。」
グラーシュが手の甲を上に、左手を差し出してきた。
視線を上げると、グラーシュが目を閉じている・・・。
雰囲気がヤバい。
なんか、そういう意味じゃないのに、グラーシュが勝手な想像でそういう意味にしているからだろう。
えぇい、ままよ。
タトゥだの刻印だの傷だの言いださなければ、ちゃんと説明する流れに持って行けたのに・・・。
こじらせないようにと思って軌道修正したのに、結局こじらせてしまった。
はぁ。
どんなのを想像していたのか知らないけど、物凄いシンプルなプレーンの指輪を成形してあげた。
「はい、これでいいかな。」
グラーシュがゆっくり目を開けた。
「はい!ありがとうございます!」
「ちょっと待って、大切な話があるんだ。」
「はい!」
「いや、そうじゃないんだ。」
「え!」
ダメだ、このグラーシュの純粋さに心が折れそうだ。
「落ち着いて、よく聞いてね。」
「はい!」
かー、俺はへたくそか。
どうしてこの流れになったんだ。
もういい、流れなんて無視だ!
「この依頼をこなす中で、グラーシュは命を狙われる可能性が高い。いや、狙われる。」
「へ?・・・」
グラーシュが変な声を上げた。
ごめんね。
説明も話の持って行き方も下手で。
でも、この話の流れになったのって・・・。
なんか先生に焚きつけられたような・・・。
先生にしてやられた感があるのは気のせいだろうか。
なんかすごい嫌悪感を向けられたイメージが脳裏をよぎった。
そうですよね。
早とちりした俺がいけないんですよね。
はい、すいません。
失敗したときに大切なことは、良く反省し、速やかにリカバーすることだ。
つまり、グラーシュに、状況説明と対策をしなくては。