第11話 謎の説教
「またか!どうなっとるんじゃ、おまえさんは!」
おじいさんのツッコミで、気が付いた。
いつもの白と黒の空間で、腕を組んだお爺さんが目の前に立っていた。
「あ、いや、そういう訳じゃなくて!」
「どーゆー訳じゃ!」
「・・・」
「エレナの召喚なんてサイコーじゃったのに・・・サイコーの一日になるはずじゃったのに!」
俺は、いったい、なんで怒られているんだ?
「ともかく闇の粒子で召喚成功したから、【黒き理】☆8ね。おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「でも、もっと集中しなさい。たまたま、この程度で済んだけど、取り扱い注意よ!」
「はい・・・。」
「まぁ、煩悩は否定できん、あるもんなんじゃ。大切なの事は、有るを理解し、向き合い、己の心を自分で上手に扱うことじゃ!」
「・・・」
おじいさんは、ドヤ顔をしている。
良い事を言ったつもりなのだろう。
今日のド頭の発言は、出来ていない人のそれだったような気もするが・・・。
先生は、小さくため息をついているし。
「ちょっと話を変えてもいいですか?」
「いいわよ。」
「もしかすると、ご存じかもしれませんが、グラーシュの護衛が必要になりました。」
「そうね。」
「どちらの粒子でも構いませんので、防御用の“バリア”というか“障壁”できませんか。」
・・・
「え?何か変な事言いました?」
「マヌケが発動したな。」
「そうね。」
「え?」
「闇の粒子で吸収するときと、あなたが普段ものを取り出しているときの・・・」
「あー!!」
「今頃気が付いたの?」
「攻撃の来る方にゲート開けばいいでしょ。なんでも丸呑みよ。」
「そっか・・・。取り出せるのは俺だけなんだし・・・。」
「そうよ。でも・・・」
「生き物禁止でしたよね」
「そう、飛びかかってくるおバカさんには使って欲しくないわ。」
闇の粒子でバリアは、使用条件が限定的か。
そうなると・・・。
おじいさんをチラッと見た。
ドヤ顔から、満面の笑みに変わっている。
「光の粒子で出来ます?」
「当然じゃ!」
またドヤ顔に戻っている。
「ありがとうございます。」
「早速ですけど、どこから攻撃が来るか分からないので、範囲指定して、グラーシュを丸ごと包む、“球”みたいなバリアできますか?」
「できる!けどダメじゃ!」
「ダメ!」
「お前さんに早い!」
「早い?」
「お前さんの理解が追い付いとらん!まずは、弧を描いた大きな障壁からじゃ!」
「分かりました・・・。」
「よろしい!」
「で、いつも通り、念じるだけでいいですか?」
「そうじゃ。」
「強度とか、使用上の注意点あります?」
「強度は最強じゃ、だから、いつも通り注意点は“カムフラージュ”じゃ!」
「強度最強をカムフラージュって・・・」
「簡単な事じゃ。積層構造にして、相手の攻撃の威力によって、適当に当たった面の何枚かを砕けるように演出すればええ。」
「・・・」
「要するに、最後の一枚が割れなければいいんじゃ!」
「そうですね・・・。」
「割られた先から修復して積層構造が元に戻るように演出すれば、サイコーじゃな。」
やばいな。
「後は、どこから攻撃が来ても大丈夫なようにする必要がありますね。」
「それは大丈夫じゃ。」
「え?」
「だって儂、だいたい、グラーシュを見てるもん。」
・・・
「そ・・・そんなことしてるんですか?」
「変態ね。」
「冗談じゃ、冗談!」
「頭の痛くなるような冗談、勘弁してください!」
「ともかくじゃ、報酬受け取りまでは儂がみてるから、安心せい!」
「ありがとうございます・・・。」
なんか腑に落ちないけど、まぁ、良いか。
「マヌケ!まだカムフラージュしなきゃじゃろ!」
「え?」