第10話 遠征中の夜の罠
「話は聞いてませんが、なんとなくは分かっています。」
「そうかい、で、どこに付くんだ?」
いきなりな奴だな。
「まだ、見定めているところじゃなかったかな。詳しく聞いてませんので、もしかすると決まっているかもしれませんけど。」
「・・・」
「あなたは?」
「俺か?・・・そうだな・・・邪魔したな。」
そう言うと、さっさと帰ってしまった。
分かり易い奴だ。
知りたいことを聞けなければ、用は無い・・・か。
どこにでもいるなんだな、この手のタイプの人は。
他のところに当たりに行ったんだろう。
真っ先に殺されなければいいんだが・・・。
嫌なことは想像するのやめて、冷静に考えると・・・。
有名どころは始めから談合しているだろう。
何せ、子爵は根回しして、正攻法で、女を兵に加えているんだから、様々な談合が既に完了していてもおかしくはない。
そんな中、行軍始まってから、ヒアリングから始めているようでは・・・。
“俺マヌケです”って言って歩いているようなものじゃないか。
まぁ、もっとも、そんなこと無いだろうって思って、何にも動かなかった俺が一番マヌケなんだけどさ。
だとしても、積極的に自ら“マヌケです”って言いふらす必要は無い。
いっそ、隠して、周りには既にどこかに付いているんじゃないかと勘違いさせて、狙われないようにした方が良いだろう。
こりゃあ、戦闘と帰路におけるグラーシュ護衛って任務が増えたな・・・。
ってか、報酬よりもグラーシュ護衛が優先だ。
本人が狙われていると自覚の有無で、護衛の効率は全く異なる。
明日グラーシュの起きたところで説明しておこう。
百戦錬磨の冒険者達に、戦闘から、報酬の受取まで狙われるのか・・・。
最後までヒリヒリしたストレスの掛かる仕事ってなわけだ。
「交代します!」
アルディがテントから出てきた。
「ありがとう、よろしくね。」
テントの中は、エレナとグラーシュが寝てる・・・。
アルディは・・・ここで寝ていたのか・・・。
こんなん、寝れんぞ・・・。
いっそ徹夜するか・・・。
どうせ、明後日まで、移動だけだし。
テントを出てみた。
アルディが無言で首を振っている。
はぁ・・・分かりましたよ。
テントに戻って、アルディーの寝ていたスペースを探した。
3人が川の字になって寝ていたのか・・・その真ん中がグラーシュ。
ヤバいな。
空いているスペースに横になった。
するとグラーシュが寝返りを打ってこちらを向いた。
俺の胸に手を乗せてきた。
・・・
寝ぼけているのか?
・・・
「ルラン様・・・」
俺の耳元で、小さくささやいてきた。
それに答えるように、頭にまで鼓動が響き始める。
お構いなしに、グラーシュの手が俺の体を這う・・・。
吐息が・・・耳に掛って・・・
や・・・
やば・・・。