第8話 連隊の給仕
「止まれー!今日はここで野営だ!速やかに野営準備開始!」
へいへい。給仕しますよ~。
・・・
・・・・・
給仕してて気が付いたけど、ガラの悪い奴多過ぎだ!
配膳する先から食べ始め、こっちが配膳してる最中から、お代わりを大声で要求する始末。
挙句の果ては、食べ終わったら返却すればいいのに、そのままにして退席するし・・・。
急造の部隊ではこんなもんか。
給仕係で、末席の俺らは残り物を食べるように言われたが、給仕が遅いだの言って自分たちで好きなようにお代わりしていく奴等の残りものなんて、残飯にしか見えないわ。
嵐のような給仕作業が終わった。
グラーシュは慣れた作業って顔をしていて疲れを見せていない。
アルディとエレナは直視できない。
俺だって、こんなことをさせるために召喚したわけじゃない・・・。
「ごめん。」
2人は静かに首を振っている。
大人だね。
他の給仕係にされた隊員も、疲れ果てて、思い思いの場所で寝ている。
「俺たちは自分たちのテントに戻るか。」
「ちょっと待て!」
え?
振り返るとそこには、仰々しい軍服を着た一行が居た。
その先頭に、リーチ伯爵?
「伯爵?どういったご用件で?」
「散歩だ。」
否定しなかったって事は、この人がリーチ伯爵か・・・。
若いな。
グラーシュとそんなに変わらない感じだ。
その割には尊大だな。
まぁ、伯爵っぽいからいいですけど。
「散歩でしたか。」
「最終日に、何も知らないで、加わったというのは君かい?」
「私です。」
グラーシュが割り込んできた。
ナイス!
「この3人は?」
「私の従者です。」
「ほう。聞けばギルドに仮登録して参加したとか。」
「はい。」
「仮登録の冒険家が、3人も従えるなんて中々ないことだ。」
言われてみればその通りだ。
久しぶりにマヌケをやってしまった。
「馬は?」
「あちらにございます。」
「4頭、うち白馬が3頭か。」
「はい。」
「目立つな・・・。」
「え?」
「第1部隊は精鋭揃いだ。しかし、期待して加えたのだから、大いに活躍してくれ。」
「はい!」
グラーシュが返事をした。
いやいや、はいじゃないんだよ。はいじゃ。
俺たち給仕よ。
それに、俺たちは見学に来たんだから、メインクエストは“情報収集”。
もう一度グラーシュに確認してもらった方が良いかもしれないな。
言いたいことを言ってリーチ伯爵一行は去っていった。
何かぶつぶつ言っているように見えたが、気にしない。
気になる事と言えば・・・“何をしに来たか“だな。
まさか給仕係を労いに来たわけでも、雑談しに来たわけでもあるまい。
攻略対象にいるの拠点に籠るゴブリン200匹とオーガ10匹で、こっちは精鋭200名で奇襲・・・。
期待の末席に作戦の内容を伝えていない事からすると・・・
さては、あの伯爵・・・。
作戦の細かいところまで練り上げれてないな。
必要な情報が足りてないのか・・・。
待てよ。
精鋭には戦闘準備させて、末席でギルド仮登録の俺らに斥候をさせようとした?
その為に品定めに来たのか。
でも、見当はずれだった・・・白馬の斥候なんて聞いたこと無いもんな。
助かったかもしれない。
エラム、ストーク、ネロア・・・マジ感謝。
「さて、俺たちも自分たちのテントに帰るよ。」