第7話 所属部隊
手続きを終えたグラーシュが帰ってきた。
「あれ、何かな?」
広場中央を見ながら、グラーシュに聞いた。
「今聞いて来た話では、今回の隊を指揮する貴族の方々だそうです。」
「貴族か・・。今回の仕事は王都からの仕事だったもんね。無理もないか。」
どうせ、これをチャンスに名声を得ようと考えて出てきたんだろうな~。
“実力が無いのに御神輿に乗りたがる”ってやつか、勘弁してほしいわ。
「子爵17人、伯爵3人だそうです。私たちは、連隊長リカルド・リーチ伯爵の“第1部隊”の末席です。」
「リーチ伯。どんな人なんだろう。」
「あまり期待しないほうが・・・。」
「グラーシュ、知ってる人?」
「リカルド・リーチ伯爵という名前は今日初めて聞きました。」
「何で、期待できないの?」
「説明を受けに行ったとき、集団で職員から説明を聞いていたんですけど・・・。」
「うん。」
「リカルド・リーチ伯爵の名前を聞いた一人が、深いため息とともに、“ボンクラが・・・”って、ボヤいてましたから。」
「それは・・・でも、予め聞けて良かったよ。ごめん、話の腰を折っちゃって。」
「はい。説明を続けますね。伯爵3名は、1名につき200人、子爵17名は、1名につき100人を従えて作戦に当たるようです。」
「という事は、部隊は約2,300人か。」
「奪還対象は5つの集落です。どの集落にもおよそ200匹のゴブリンと10匹のオーガが居るだろうという事です。」
「ほう・・・」
「私たちの攻略先は、真ん中で一番麓側の集落になります。他の攻略対象は、もう少し山に入ったところになります。」
「うん・・・」
「それから、よくわからないですけど、私たちの攻略開始は一番遅くなるみたいです。」
「それはたぶん、うちらが攻める場所が一番手前とか、一番の難所とかで、最初に始めると、他の4つが警戒してしまうからじゃないかな。」
「そういうことですか。だから、私たちの出発は最後なんですね。」
「多分だけどね。できることなら、5か所同時に奇襲したいんじゃないかな。」
「あと、エルフ側の参戦もあるようです。」
「え?エルフ?」
「はい、マイール山にはエルフが住んでいます。今回のゴブリン・オーガの討伐及び集落の奪還の依頼は、エルフからの救援で話が始まったみたいで。」
「山の上からエルフ、下から特別掃討奪還連隊で挟撃か。」
「で、俺らの分担は?」
「・・・」
「どうしたの?」
「給仕です・・・。」
これは傑作だ。
まぁ、初めての参戦だから、そのくらいが丁度良いか。
「でも、安心してください。」
「え?」
「他にも給仕担当は居ますから。」
「りょーかい。」
可愛いフォローありがとね。
だんだんと出発が始まり、広場から人が減り始めた。
「目的地までの距離は?」
「大体100kmです。」
「3日は移動に使うんだろうね。1日で攻略が済んでも、また帰り道で3日使う。食料は?」
「支給されます。それに、もし支給されなくても先日の買い出しで10日分くらいは買い込みました。」
そうだったんだ。
食料はグラーシュに任せているから、買い出しの際にグラーシュに渡されるがまま、何も考えず受け取ってゲートにしまっていたけど・・・。
そんなに持っていたなんて。
森林公園で食料切れと直面した直後の買い出しだったから、買いまくってたのかな。
おかげで助かったけど。
「第1部隊!出発!」
いよいよ移動開始か。
どうなる事やら。
末席だから、気楽についていきますかね~。