第5話 2冊の絵本
長いっ!
幼児用の絵本なのに、この長さはなんだ。
最後まで行きつく前に寝るんじゃないか?
長編の原作を参考に、絵本を作ったって感じなのかな。
本屋でおばあさんが進めてくれた本だから、多分この内容は、参考になりそうだけど・・・。
中身から推測するに、精霊と動物と人間の協力関係が望まれている・・・。
動物との協力関係ってのは分かる。
前世でも、ありふれた話だし。
今だって、エラム達の協力を得てここまで旅ができているから、この世界でもそうなんだろう。
ただ・・・、精霊との協力関係?
精霊に取り付かれたケースしか知らない俺としては、精霊と協力のイメージがわかない。
自分に属性が無いから、グラーシュの見つけたノームとコミュニケーションをとる気が起きなかった。
それにグラーシュは、ノームが見えているようだったけど、接触を図っていなかった。
仮に、グラーシュが警戒してたからってだけなら、別にいいんだけど。
興味があるのは、自分の属性と関係無い精霊からも協力が得られるのかという点だ。
この絵本に出てくる“ひと”は全属性持ちだったのか、持っていない属性についても協力を得られたのか・・・。
俺は自分の属性を持たないけど、魔法を使える余地がある?
「グラーシュには、森林公園でノームが見えたんでしょ?」
「はい。」
「ノームとお話する気は無かったの?」
「はい。」
「なんで?」
「精霊とお話するなんて今まで聞いたこと無かったので、話しかけてみようなんて思いつきませんでした。」
そうか。
魔法には属性があって、精霊にも属性があって、精霊から協力を得ることができる・・・。
魔法使い、魔法関係の学校や研究機関から情報収集しないと、詳しい事はわかないかもな~。
「それとさ、今いるシーデリア国以外にも国ってあるの?」
「ん-、どうなんでしょうか。私はよくわかりません。」
「そうか・・・次、いってみよっか。」
読み終えた絵本をゲートにしまい、次の本を取り出した。
“大きなお山と小さなお山”
あかいろのお山
ゴーーッ、ゴーーッ
ひをふくお山
ひのせいれいのすむお山
あおいろのお山
ザブン、ザブン
みずのながれるお山
みずのせいれいのすむお山
みどりいろのお山
ビュービュー
かぜのふくお山
かぜのせいれいのすむお山
ちゃいろのお山
ゴロゴロ
つちといわのお山
つちのせいれいのすむお山
おおきなお山
おおきくて、しずかなお山
かみさまのすむ、しずかなお山
せいれいとどうぶつがなかよくくらす、しずかなおやま
かみさまのすむ、こわいお山
わるいことすると、すぐにおこりだす、こわいおやま
かみさまのすむ、ふしぎなお山
「なるほど・・・。」
「この4つの山は、シーデリアの地図の内容と合いますね。」
グラーシュが積極的に発言してくれた。
いいね、積極性は大切!
「そうだね。そして、大きなお山ってのは・・・」
「祖山エンソフィーの事ですね!」
「だね・・・」
「俺が気が付いたのは、このエンソフィーの麓だったってことだよね?」
「いえ、山に入っていたと思います!」
そうか。
だから、俺が、ふらふら散歩しても、エンソフィーの加護(?)のおかげで、変なことが起きなかったんか。
まぁ、俺が加護を得ているというか、エンソフィーという聖域だったおかげ・・・か。
当時の俺は死にぞこないの“ヒョロガリ”。
そんなのが散歩してても、絵にかいたような“人畜無害”だもんね。
かみさまとやらに静観されていたのか、聖域だから揉め事に巻き込まれなかったのだろう。
ん?・・・
そうなると、あの祠は何?
もしかすると、物凄い特別な意味のある祠だったとか?
エンソフィー山の麓を中心に支配するレーゼン侯爵領にも、何かあるかもしれないな・・・。
って、レーゼン侯爵領に戻ろうにも・・・ずいぶん遠くまで来ちゃったぞ。
しかも、これからオーガ・ゴブリン退治・・・・。
レーゼン侯爵領散策は、当分先になりそうだな。