第1話 参加は決めたものの
民宿に到着した。
アルディは馬の世話に行き、グラーシュは夕飯の準備に取り掛かってくれた。
いよいよ明日、転生して初めての魔物退治に本格的に参加・・・。
なんだけど、如何せん、ピンと来ていない。
もしかすると、実際に戦闘が始まるとスイッチが入る物なのかもしれないな。
そういう態度がいけないって、おじいさんと先生に言われたような気がするけど・・・。
“南の英傑”で聞いた感じでは、自分たちで自由に討伐していいわけじゃなさそうだから、どうしても他力本願でスイッチが入りそうなんだよね。
実績も無い俺たちは、水汲みとか、野営準備とかやらされそうな気もするし。
何をやらされるか分からないと思うと、今更ながら、なんだか不安で緊張してきた。
グラーシュには悪いけど、夕飯は緊張のあまり味が分からなかった。
緊張しても仕方ないって言い聞かせても、緊張するものは緊張する。
初めてのことなら、尚の事だ。
緊張しないようにとするよりも、緊張する自分と上手に付き合うしかないって感じかな。
せっかくグラーシュと同じ部屋だというのに、イレギュラーな仕事が飛び込んでしまったせいで、なんだかね。
グラーシュも察してくれたようで、程よい距離感を取ってくれている。
ありがとう。
「ごめん。先に寝るね。」
「いえ、ゆっくりお休みください。」
「ありがとう。」
・・・
・・・・・
「グラーシュはイイ子じゃな~。」
白と黒の世界に降り立った直後にいきなり話しかけるのは、ビックリするから勘弁してほしいな。
しっかし、おじいさんは、グラーシュの事が本当にお気に入りだなぁ。
気持ちは分からないでもないけど・・・。
「あ、【白き理】☆7じゃな・」
ははは、俺のスキルは“次いで”ですか・・・。
「黒き理も☆7ね。おめでとう。」
「ありがとうございます・・・。」
「なんじゃ、浮かないのう。」
大切なのは、気持ちの切り替え!
目の前のチャンスを逃すことになるぞ、俺!
「なんでもないです。そんなことより、凄い便利ですね。」
「当然じゃ。」
「そうね、当然よ。」
そうですね、当然ですよね。
「そんなことより、まだ覚悟ができてないみたいじゃな。」
「そうね、他力本願な覚悟は使い物にならないわよ。」
「ははは、手厳しいですね。ちゃんと調整しますから。」
「ちゃんと、この世界と向き合って生き抜くために力を使いなさいよ。」
「はい。」
「・・・」
「どうしたの?」
「これから、どのくらいか分かりませんけど、野営が続きそうじゃないですか・・・。」
「そうじゃな。」
「もう一人、召喚しようかなって思いまして。」
「ん?どっちで?」
「今度は黒です!」
「あー!」
おじいさんが叫んだ。
「☆が・・・黒が先行してしまう・・・。」
「ふふふ、そうね。」
「まぁ、これから戦ですから、目を瞑ってください。」
「そうじゃな・・・。」
「そうと決まれば、早く起きなさい。」
「はい。」