第31話 初仕事の報酬と条件
「すいませーん。オーガとゴブリンの進行の原因が分からないって事は、後々に調査することになるんですよね?」
あ・・・ついつい口を挟んでしまった。
職員と話すのはグラーシュって徹底しないと・・・。
そう提案した俺が破ってどうする・・・。
「はい。そう考えて間違いないでしょう。」
「って事は、ただ討伐すればいいって訳じゃないですよね?」
「多分そうですね。その辺は作戦内容と関係しますので、参加表明した方に説明があると思います。」
「なるほど。」
「王都軍が少ないってのは?」
「簡単なことですよ。王都軍は、貴族が多いです。子爵が主ですけど、中には伯爵も居ます。死人はもとより怪我人も出したくないんですよ。」
ははは、マジですか。
「中には参加する方もいますが、大体、何かを勘違いしている方ですよ。貴族の誇りだの誉だのを掲げて絡んでくるから、質が悪いですよ。」
「・・・」
「そんな人が指揮官で来て、兵隊はギルドで集めるんですよ。参加者は装備を持ち込むから費用も抑えれるって考えているし・・・。」
「・・・」
「しかも、うちはそこそこのギルドなので、圧力が凄いんですよ。“南の英傑”が人を集めれば、他の所でも集まるって考えているようで!」
「ははは、苦労してるんですね。」
「あ、すみません。つい。」
「いいんですよ。そういう話を知っていた方が、参加後の状況に落ち着いて対応できますから。」
「という事は、参加して頂けるんですか?」
ヤバ、俺が前面に出てる。
慌ててグラーシュの背中を軽く叩いた。
「はい!参加いたします!」
グラーシュが驚いて上ずった声で、応募した。
「報酬について教えてもらえますか?」
「報酬は、成功報酬のみです。」
「成功報酬は?」
「今は、算出できません」
「え?・・・どういうことですか?」
「あ、ごめんなさい。ちゃんとしてるんで!」
「どんな風にちゃんとしてるんですか?」
「奪還および討伐完了後に、私たちのところに報酬がまとめて届きますので、それを山分けすることになります。ここだけの話、とにかく大金って話ですよ。」
何処がちゃんとしてるんだ・・・ザックリしすぎだろ。
一人頭いくらと示すよりも、“大金”って印象で、人を集めれるって考えてのことなのかな・・・。
「山分けの際には、王都の役人さんが立ち会いますので、南の英傑がしれっと天引きすることはありませんので、ご安心ください。」
いや、その辺は不安に思ってないんだよね。
何せ公立ギルドの紹介状の公認が出ている“南の英傑”さんですから。
そんなことより、その報酬の仕組みだと・・・。
まぁ、今気にしても仕方ないか。
「ご参加有難うございます。早速ですが、こちらの参加申込書と、ギルドの仮登録申請に記入して、向こうの受付に提出してください。」
グラーシュが2枚の紙を受け取り、書き込み始めた。
「任務参加の準備を済ませて、明日の正午、この館の正面広場に集合です。」
「はい。」
「何処の拠点を落すかなど仕事の割り振りは、集合後に説明されますので、ご了承ください。」
「了解です。」
「それでは明日、お待ちしてます。」
「失礼します。」
グラーシュが2枚に書き込みを終えて、受付に提出し、“南の英傑”を後にした。