第30話 直面した初仕事の内容
“マイール山にはエルフが住んでいるが、マイール東には人間たちの集落がある。”
“そのマイール東側から、オーガがゴブリンを連れて侵攻してきた。”
“侵攻がなぜ始まったかは不明。”
“エルフの協力を得た人間たちの抵抗により、状況は拮抗していた。”
“しかし、最初の村が落とされて、状況が一転した。”
“ゴブリンと住民の交配が進み、ゴブリンの数が増加。”
“数に物を言わせて、いくつも集落が落とされてしまい、いずれも、拠点化してしまっている。”
“集落の奪還、オーガとゴブリンの一掃をすることになったが、拠点を1つずつ潰すと、取り逃がしたオーガやゴブリンが残った砦に集中してしまう。”
“だから、拠点は出来るだけ同時に攻略をする。”
“マイールに北側で面しているミーヴ侯爵は、この一件について戦力の投入を考えていない。”
“それに同調してか、バーエン侯爵も、王都が対応すべきだと静観している。”
“これを受けて、王都軍とマイール山のエルフで対応することになったが、王都軍だけでは戦力が不足するため、南の市街地にて、広く一般ギルドに協力要請を出した。”
“ギルドで募集して集まった義勇軍と、マイール山のエルフたちで挟撃する。”
ん-、これ・・・マジか?
この世界の常識の無い俺には、はい、そうですねって信じることができない。
でも、募集したいがために書かれた募集内容と、実際は違うことなんてザラだし。
今ここで、職員に詰問しても仕方ないか・・・。
「グラーシュぅ。マイール山ってのは王都の南西の山だったよね?」
「はい。」
ゴブリンは、確か“妖精”だったな。
俺の思っているカワイイ“妖精”の概念をぶっ壊してくれて、無様に敗走させられたアレだよな。
ってことは、オーガも“妖精”なんだろうな。
妖しい精霊ってことなのかな?
知らんけど。
まぁ、依頼内容は何となく分かった。
この内容って・・・もう戦に近いなぁ。
なんでこう、1つずつって感じにならないんだろう。
俺が入社した企業もこんな感じだったな。
名目上は人材育成プログラムがあるって言ってたのに。
いざ入社したら、作り込まれた人材育成プログラムなんてなくて、ひたすら目の前の仕事に追われて、一つ一つステップアップなんで夢のまた夢・・・。
結局、状況に揉まれて、来る球を選ばず、ひたすら打ち返すように、与えられた仕事に取り組むのみだった。
手にしているのが木製バットみたいなものなのに、たまにバスケットボールやらボーリングの球みたいな・・・めちゃくちゃな仕事が飛んできて・・・。
ここでも、結局同じか。
計画的に俺がやろうとしても、なかなか計画通りには進まないもんだな・・・。
・・・
「やります?」
グラーシュが俺の顔を覗き込んできて、我に返った。
「やってみよう。」
「はい!」
グラーシュの気持ち良い返事には悪いけど、依頼初挑戦だし、ダメならどさくさに紛れて逃げちゃえばいいんだし。
「すいませーん。」
グラーシュがさっきの女性職員に話しかけた。
「ご一読いただけましたか?」
「はい。」
「何かご質問等ございますか?」
忙しくても丁寧な対応だ。
色々分からないから、お言葉に甘えて・・・。